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社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

不正調査での当局の情報力に脱帽!
専門家が駆使する「デジタルフォレンジック」技術とは

小川真人 [ACEコンサルティング株式会社 代表],白井邦芳 [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]
【第12回】 2010年10月27日
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当局からの呼び出しに
疑心暗鬼になった副社長

 その日、A商事の副社長X氏は、調査当局からの呼び出しを受けていた。取引先であるY物産の不正取引に協力したとの嫌疑により、A商事に対する調査が始まってから1ヵ月が過ぎようとしている時であった。調査に際しては、A商事の特定人物が使用するパソコンを押収されており、未だに返却されない状況にあった。

 「貴殿は今まで、今回の不正協力は担当部長の独断で行ったことであり、経営陣をはじめ会社の組織的な関与はない、と説明してきたはずだ。

 しかし当方の調査によれば、実際には貴社取締役のY氏は、担当部長から報告を受け、後日問題が発生しないように、関連する情報の廃棄を担当部長に指示しているではないか。

 先日提出された貴社の調査委員会の中間報告書も、経営陣の関与なしとしているようだが、この状況は経営陣による隠蔽とみなされても仕方ない。調査委員会とも協議の上、適切な対応をとるように」

 との厳しいコメントとともに、その証拠資料として、関係者のパソコンやA商事のサーバから取り出したという、メール情報や電子情報の一部のプリントアウトを渡された。

 X副社長は、当局からの厳しい叱責に大きなショックを受けるとともに、なぜ、当局の調査結果と自社の社内調査の結果が大きく異なるのか、疑心暗鬼に陥ることとなった。

なぜ情報格差が
生じたのか

 X副社長は、会社に戻ると、早速、社内調査の責任者A氏を呼び出し、先程の当局からの指摘を伝え、受領した証拠資料の一部を手渡すとともに、当局の指摘の事実確認と社内調査の再実施を命じた。

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小川真人(おがわまひと) [ACEコンサルティング株式会社 代表]

公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMGあずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。

白井邦芳(しらい くによし) [ACEコンサルティング株式会社 エグゼクティブ・アドバイザー]

AIU保険会社及びAIGグループ在籍時に数度の米国研修・滞在を経て、企業の危機・不祥事・再生に関するコンサルティングに多数関わる。2350事例にのぼる着手案件数は業界屈指。2009年から現職。リスクマネジメント協会評議員、日本法科学技術学会正会員、経営戦略研究所外部専門委員、著書に「ケーススタディ 企業の危機管理コンサルティング」(中央経済社)等がある。


社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

海外で発生するテロや暴動そして天災、果ては脅迫から社内の権力闘争の暴露まで。現代の企業はまさにリスク取り囲まれて活動している。ことは生命にかかわることが多いにもかかわらず、依然として、日本企業はこの種のリスクには鈍感。イザというときに、じたばたしないためには、準備こそがすべて。具体的な事例を基に危機管理の鉄則を公開する。

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