ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

証券取引等監視委員会から突然の電話
不適切会計が発覚!
不注意による予兆の見落としが大きなダメージに

小川真人 [ACEコンサルティング株式会社 代表]
【第7回】 2010年8月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

見落とされた不適切取引の予兆

 200X年9月15日、X社の経理担当者Aは、得意先Y社から1本の問い合わせ電話を受けていた。「8月分の請求金額のうち、T1システム一式の1億円分は、その先の販売先Z社からの入金が未了のため、請求額から除外したうえで、請求書を差し替えてほしい」との内容であった。

 Y社向け売上の請求条件は月単位で売上を集計したうえ、月末締め翌月末の現金精算となっている。したがって8月分の売上は、9月末に現金回収されるのが原則である。電話での要請はこの原則に対する例外処理になる。電話を終えると、状況が理解できない経理担当者Aは、Y社を担当する営業担当者Bに、得意先Y社から問い合わせがあった旨を伝え、状況調査を依頼した。

 翌日、営業担当者Bの上司であるC営業課長から、Y社から先の取引処理が遅れているようなので、T1システム一式の売上分の1億円は、調整が済むまでY社への通常の請求対象から外すようにしてほしい、との依頼がAになされた。経理担当者Aは、放置するとY社が売掛金未回収先と評価されてしまうため、T1システム売上分の1億円を「売上済み請求指図待ち」と備考欄に記載し、請求額に含めないように特例処理を行った。

監査のすり抜け

 2ヵ月を経過しても、T1システム一式の売上1億円は、未だ未回収の状態であった。経理担当者Aが、当該案件を請求できるようにY社と調整するように営業担当者Bに依頼したところ、しばらくして、「仕様変更」を理由に、従来のT1システムの売上の1億円を取り消し、新たにT1aシステムの売上として1.2億円の売上伝票が起票されてきた。

 経理側がチェックしたところ、T1aシステムに関する注文書検収書などの売上計上に必要とされる証憑(請求書など取引の存在を証明する書類)一式は問題なく揃っていた。しかし、C営業課長より、支払い時期に関して現在調整中とのコメントがあったため、前回同様に「売上済み請求指図待ち」と備考欄に記載し、通常の請求額には含めない特例処理を行った。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

小川真人(おがわまひと) [ACEコンサルティング株式会社 代表]

公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMGあずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。


社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集

海外で発生するテロや暴動そして天災、果ては脅迫から社内の権力闘争の暴露まで。現代の企業はまさにリスク取り囲まれて活動している。ことは生命にかかわることが多いにもかかわらず、依然として、日本企業はこの種のリスクには鈍感。イザというときに、じたばたしないためには、準備こそがすべて。具体的な事例を基に危機管理の鉄則を公開する。

「社長!事件です イザという時に思考停止しないための「危機管理」鉄則集」

⇒バックナンバー一覧