「8年越しのラブコールが実った」──。総額850億円の買収に踏み切った家電量販店大手、ノジマの野島廣司社長は感慨深げに振り返る。

自社を上回る規模の企業を買収するノジマ。野島廣司社長は「買収でリストラは行わない」と明言した

 ノジマは11月18日、携帯電話販売会社アイ・ティー・エックス(ITX)を買収すると発表した。2015年3月に投資ファンドの日本産業パートナーズなどから全株を取得する。

 売上高はノジマの2184億円に対し、ITXは2573億円(いずれも13年度)。小が大をのみ込む買収劇で、ノジマは携帯電話販売事業に本格的にかじを切り、競争が激化する家電量販店業界で生き残りを狙う。

 ノジマはかねてITXに目を付けていた。「商社系やメーカー系という色が薄く、何よりドコモに強かった」(野島社長)からだ。06年にはITXの経営権を握っていた当時のオリンパスの菊川剛社長に直談判したこともあった。だが、当時、ノジマの売上高は1000億円を超えたばかり。手が届く存在ではなかった。

 野島社長が「ずっと恋焦がれていた」と声を弾ませるITXの携帯電話販売台数は266万台で国内5位(13年度、調査会社シード・プランニング調べ)。

 ノジマの約100万台を加えると、販売台数で国内3位へ浮上することになる。