先週末台湾で行われた統一地方選挙、及びそこから発生する政治情勢は、本連載のテーマである中国民主化問題を考察するうえでフォローアップしておかなければならない。本稿では、(1)選挙過程と結果をレビューし、(2)選挙過程・結果が中国との関係に及ぼす影響をプレビューし、(3)最後に選挙過程・結果が“中国民主化”にもたらすインプリケーションを3つの視角から考える。

地盤のなかの地盤を
失った国民党

 11月29日、土曜日。

 台湾22県市の首長や地方議員らを選ぶ統一地方選挙が投開票された。投票率は約68%。2016年の総統選挙の前哨戦と捉えられていた。

 結果は、首長ポストで国民党が15から6に減らし、民進党は6から13に増やした。肝心な6つの直轄市市長選挙では、国民党が台北市、桃園市、台中市でそれぞれ市長ポストを失った。これによって、民進党が4直轄市、国民党が1直轄市、無所属が1直轄市の市長を押さえるという地方政治構造へと変化した。

 特筆すべきはやはり台北市長選である。

 台北市は1998年以来16年間に渡って国民党が市長ポストを押さえてきた。国民党にとっては地盤のなかの地盤である。国民党が今回擁立した候補は与党・国民党の連戦・名誉主席の長男・連勝文氏。最大野党・民進党は台北市長候補の擁立を見送り、実質的に無所属で医師出身の新人・柯文哲氏を支持した。

 結果は、得票率57.1%:40.8%で柯氏が圧勝。連氏は惨敗だった。

 選挙前の世論調査などを見る限り、この結果自体は予想通りであった。特に、若年層の投票傾向は顕著で、20代の有権者の間では約80%が柯氏を支持していた。