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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

「学運」の背景にある中国台頭への警戒感
台湾の「民主主義」はどう影響を受けるのか

加藤嘉一
【第27回】 2014年4月22日
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“愛国奴”に
共鳴する台湾知識人

 2011年5月、私は台湾で《愛国奴》(大塊文化出版社)という本を出版した。“愛国奴”には「知らぬ間にお国を売っていく人たち」という定義をした。

 お国を売っていると分かっていながら実際にお国を売っている“売国奴”に比べて、“愛国奴”は社会のなかで無数に、無自覚に、無作為に蔓延していくという意味で厄介であり、たちが悪いというトーンで筆を進め、ナショナリズムが国家や社会から理性を奪っていく現象の危険性を指摘した。

 同時期、私は初めて台湾を訪れた。

 《愛国奴》の出版記念イベントに出席することが目的だったが、関連して行われた座談会には、現地で影響力のある政治家や社会活動家、評論家や学者たちが参加してくれた。特に、1980年代から1990年代にかけて民主化を求める学生運動(台湾では通称「学運」)を引っ張ったリーダー格たちが積極的に議論に加わってくれた。彼らは「自由や民主主義は我々自らの行動で勝ち取るものだ」と力強く主張していた。

 国家と民族の関係、社会と市民の関係などの観点から、「国家が健全に発展していくために、国民はどうあるべきか?」という人類社会における普遍的テーマを語り合った。

 「台湾にも愛国奴はたくさんいる。愛国奴ではなく、真の愛国者を育てていかないと、台湾の未来は危ない」と主張する知識人が複数いたことには、インパクトを感じずにはいられなかった。

中国での出版禁止から学んだ
台湾と香港経由のアプローチ

 《愛国奴》は当初中国で出版する予定であった。そもそも、中国で言論活動を続ける過程で、日中関係という渦のなかで、ナショナリズムや愛国心といった現象が私の脳裏で日増しに“問題化”していったことが、拙書を書くきっかけとなった。

 しかし、結果的に出版はできなかった。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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