2002年、イランを取材していたとき、首都テヘランのいろいろなところに行った。石油公団のような機構に行ったときは、すごいものを発見した。そのオフィスビルに入ると、がらんとした1階のロビーの隅っこに、地理用の模型らしい工作物が置かれている。ビルの1階に置かれているのを見て、このビルに出入りする人々に見せようとしているのでは、と思った。

 しかし、出入りする人々は誰も関心を払っていない。一体何だろうと確かめたら、カスピ海から中国へ延びて行くパイプラインと、それが経由するアフガニスタンやパキスタンの地形を描いたものだと言われた。そのとき、さすがに驚いた。だが、それ以上、関心を示さなかった。アフガニスタンが戦乱中にあることを考えて、これは非現実的なプロジェクトだと判断したからだ。

パキスタンから伸びるパイプライン

 ところが、最近、中国から伝わってきたあるニュースを見ると、どうしたわけか、当時テヘランで見たあのパイプラインの敷設路線図模型を思い出さずにはいられなくなった。このニュースの出所はパキスタンのメディアだ。11月25日にパキスタンのメディアが報じたものによると、中国は30億ドル近くを投じてパキスタン南部のグワダル港から中部のナワブシャー市に液化天然ガスのパイプラインを敷設することになり、完成すればペルシャ湾地区の天然ガス資源を新疆ウイグル自治区のカシュガルに直接輸送でき、エネルギー・安全・経済において重要な意義がある、という。

 パキスタンの政府関係者の話では、パイプライン建設は両国の取り決めによるものであり、公開入札は行わず、30億ドルのうち10億ドルはパイプライン敷設、20億ドルは関連施設に用いられるという。

 パイプラインは将来的にはイランまで延伸される可能性も残されており、1日あたり少なくとも10億立方メートルの天然ガスを輸送することができる。

 このパイプラインが完成すれば、中国のペルシャ湾からのガス輸送はインドを避けることができ、石油やガスの輸送上の安全が確保しやすくなる。