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ビジネス・クリエーション!
【第4回】 2014年12月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
ビル・オーレット [マサチューセッツ工科大学マーティン・トラスト・アントレプレナーシップ・センター マネージング・ディレクター]

MIT式起業のレッスンで教える
イノベーションの定義とは?

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「イノベーション」「起業家」とは、いったい何なのか? はっきりしているようで、実は非常に曖昧な部分もあるこれらの定義について、今回は考えていきましょう。

 「起業家」の定義は、一見はっきりしているように思えます。つまり、これまでにない新事業を創設することです。「これまでにない新しいビジネスを創り出すこと」といったあたりでしょう。しかし、同僚とともに世界各地の企業を訪れ、いかに起業家を育てるべきかと話し合っているうちに、「起業家」には少なくとも2種類いることに気づきました。その違いは重要です。それぞれの目的もニーズも大きく異なるからです。

【中小企業の起業家】

中小企業(SME/Small & Medium Enterprise)は1人で創業し、地域市場を対象にビジネスを行ないます。事業を拡大してもそれほど大きな規模にはならず、多くは家族経営のような非公開会社のままです。創業者は、主に独立と現金収入の獲得という形で報われます。

 資金を投入すれば、比較的すぐに収益が増え、従業員も増えます。そうした起業家は点在し、創出される仕事は地域向けのものなので、コスト削減を目的にアウトソースはできません。他社製品の販売を委託さえる企業も多いです。

【イノベーション主導企業の起業家】

イノベーション主導企業(IDE/Innovation-Driven Enterprise)は、リスクがいっそう大きいのと同時に、より野心的です。地域市場にとどまらず、世界中か、少なくとも広域に製品を売りたいと考えます。既存のライバル企業をしのぐ競争力が得られるほどの技術やビジネスモデル、その他の画期的なアイデアをもとに、多くは複数のメンバーで創業します。

 管理できないほど巨大な富を築き、事業拡大のために株式公開を迫られることもあります。初期の歩みは緩やかでも、顧客を引きつけられるようになると急成長します。株主が不得手会社のコントロールが効きにくくなりますが、それでも、さらに事業を拡大し、世界展開を目指します。

 IDEモデルの仕事は、競争力強化のために外部委託も可能でしょう。地理的には、革新的な企業が集まる場所を拠点とします。投下資金による成果が見えるまでには時間がかかります。動きの速いSMEモデルに比べてIDEは成長が緩やかで忍耐を強いられますが、より大きな結果を残せる可能性があります。アップル、グーグル、ヒューレット・パッカードなどがその例です。

 健全な経済では、前期の2種類の起業が起こり得ます。両者に優劣はありませんが、考え方や成功に必要なスキルは異なります。私が特に教えるのはIDE企業を興すことです。私自身、イノベーションをもとにした企業をふたつ(ケンブリッジ・ディシジョン・ダイナミクスとセンサブル・テクノロジーズ)を共同創設したことがあるからです。それでは次に、そもそもイノベーションとは何かについて、考えていきましょう。

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    ビル・オーレット [マサチューセッツ工科大学マーティン・トラスト・アントレプレナーシップ・センター マネージング・ディレクター]

     

    マサチューセッツ工科大学(MIT)で起業家教育を担うMITマーティン・トラスト・アントレプレナーシップ・センターのマネージング・ディレクターであり、人気講師のひとりでもある。みずから創業したセンサブル・テクノロジーズ社など複数のベンチャー企業の社長・役員ほか、MITスローン・スクール・オブ・マネジメントの上級講師を兼務。IBM勤務を経て、MITスローン・スクールで経営を学んだのち起業した経験をもつ。センサブル・テクノロジーズ社は20カ国へ進出し、24以上の賞を受賞、『フォーチュン』誌やビジネスウィーク、ウォールストリート・ジャーナル等に取り上げられている。ハーバード大学卒(エンジニアリング)、MITスローン・スクールで経営学修士取得。詳しくはwww.disciplinedentrepreneurship.com.参照。


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