肝臓が“フォアグラ状態”になる現代病「脂肪肝」。食べ過ぎや運動不足に伴う肥満、お酒の飲み過ぎが主な原因だが、自覚症状がないため多くの人が見過ごしている。しかし、放置すれば肝炎、肝硬変、肝がん等の大きな病気につながるため、早期改善が必要だ。しかも最近では、無理なダイエットとリバウンドを要因にしたものやお酒を飲まない人の脂肪肝も増加している。では、脂肪肝にならないためにはどうすればいいのか。脂肪肝の正しい知識とその改善・予防法について日本大学医学部消化器外科の高山忠利教授に話を聞いた。(聞き手/医療ジャーナリスト 渡邉芳裕)

いまや5人に1人が脂肪肝!?
最もリスクが高い“働き盛りの中年男性”

――「脂肪肝」とはどのような状態なのでしょうか?

肥満とアルコールだけが原因じゃない!<br />「脂肪肝」を引き起こす“ダイエット”の危険性高山忠利(たかやま・ただとし) 1955年東京生まれ。日本大学医学部消化器外科教授、同・医学部長。 1980年日本大学医学部卒業,同大学院外科学修了後、国立がんセンター中央病院外科医長,東京大学医学部肝胆膵移植外科助教授を経て、2001年から現職。1994年、世界初の肝尾状葉単独全切除(高山術式)を開発。肝臓外科医として、3000例の肝切除・肝移植を執刀し、肝臓癌手術数全国1位。2012年、NHKドラマ「はつ恋」医事監修。主な役職として、日本肝臓学会理事、日本外科学会評議員、日本消化器外科学会評議員、日本肝胆膵外科学会評議員、日本肝癌研究会常任幹事などを務める。著書に『肝臓病の「常識」を疑え!』がある。

 脂肪肝とは、肝臓に脂肪が大量に蓄積した状態をいいます。肝臓の周りにたくさんの脂肪がついている状態を想像する人が多いのですが、実はそうではありません。脂肪肝とは、肝細胞の一つひとつに脂がたまってしまっている状態です。肝臓の周りに脂肪がついていると思っている人は、メタボリックシンドロームでいわれるようになった内臓脂肪と混同しているのではないでしょうか。脂肪肝とは、肝臓の周りではなく、肝臓の中に脂肪がたまっている状態をいうのです。

 たとえば、世界三大珍味として食されているフォアグラは、究極の脂肪肝といえるでしょう。フォアグラは、強制的にガチョウを太らせて、肝臓の約8割を脂肪にしたものです。つまり、脂肪肝と診断された人は、自分のおなかの中の肝臓が“フォアグラ状態”になってしまっているというわけです。

――脂肪肝になると、どんな症状が出てくるのですか?

 脂肪肝になっても、自覚症状はありません。しかし、放っておくと、肝機能は低下していきます。健康な人でも肝臓には3%の脂肪がたまっていますが30%以上脂肪がたまると脂肪肝と診断されます。肝臓全体の3割が脂肪になっている状態では、肝臓の働きが落ちるのは当然ですよね。

 とはいえ、自覚症状がないので、ほとんどの人が健康診断で初めて、自分が脂肪肝であることに気づかされるというのが実状です。しかも、脂肪肝は、血液検査の数値だけ見ても判断できません。脂肪肝かどうかを診断するには、腹部超音波(エコー)検査を行う必要があります。エコーの画像を見れば一目瞭然。本来であれば、肝臓はグレーに映りますが、脂肪肝の場合は明らかに白く見えるからです。