自民党が事前予想通りの圧勝を遂げた。国民からすれば、経済運営は「アベノミクス」しかなかったのだろう。しかし投票率に表れているように、それは決してアベノミクス経済運営への賛辞ではない。必要なことは、選挙戦で議論された、アベノミクスの副作用やリスクをミニマイズしていく経済政策を、着実に実行していくことだ。
不透明性は多少改善
安倍総理は、解散直前に消費税率の10%への引き上げを17年4月まで延期するとともに、消費増税関連法から景気条項を外す決定をした。今後はエコノミストを総動員してのパフォーマンスもなく、よほどのことがない限り増税が行われるので、経済の不確定要因が排除された。このこと自体は評価すべきだ。
増税延期の記者会見で総理は、「2020年度プライマリー黒字の公約は守る」ことを改めて明言した。その前に中間目標として、「2015年度プライマリー赤字半減」がある。最終目標のコミットは、この中間目標の達成も含まれるわけで、今後の財政運営が分かりやすくなったといえよう。ちなみにプライマリーバランス(基礎的財政収支=政策的な経費と税等の収支)が、支出(経費)超過ならプライマリー赤字で、収入(税金等)超過ならプライマリー黒字という。
このように、不確実性がある程度なくなった点は評価できるが、問題は実行に向けての各論だ。これからすぐに始まる経済対策・14年度補正予算編成と、引き続く15年度当初予算編成が大きなカギを握る。
補正予算は最小限度に
補正予算を考えてみよう。財源としては、前年度予算の剰余金(1.5兆円)や今年度の税収上ブレ、国債利払い費の不用(国債金利が当初予想より下回ったことによる予算の使い残し分)などで3~4兆円程度の財源が見込まれる。前年度剰余金は法律で、その半分を国債の償還に充てることが決められている。また今年度の税収の上ブレや国債費の不用は、今年度国債発行の減額に充てることが予算編成の常識だ。また、補正予算の一部が次年度に繰り越されるので、2015年度プライマリー赤字半減という目標も念頭に置く必要がある。