ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

経済報道の曖昧さを暴いてくれる
「確率・統計」の知識

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第11回】 2008年9月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 以前、当コラムで、前期はミクロ経済学に相当の時間を費やした、という話をしたが、その次に苦労したのは「確率・統計」の授業であった。そう、高校の数学の授業でもやったあの「確率・統計」である。「ABCDEの5人のうち3人を選ぶ方法は何通りあるか?」という質問を聞くと、「ああ、そんなのやったな」と思いだす人も多いに違いない。しかし、なぜファイナンスの大学院で「確率・統計」なんだと疑問に思う人も多いだろう。しかも、この「確率・統計」の授業は必修科目なのである。

株価と為替は
どの程度連動しているのか?

 実は、ファイナンスや経済学においては、上記のような順列の問題より、統計分析の手法を身につけることが重要となる。

 たとえば、メディアで株価の動きを解説する人たちは、「株価と為替の値動きは連動する」、「株式市場と不動産市場は連動する」というセリフをよく使う(自省をこめて)。そして聞く側もそれを当然のこととして受け止めているが、果たしてどれぐらいの割合で連動するのだろうか。100%なのか、半分ぐらいの50%の割合なのか。また、株価が1%動くと為替は一体いくら動くのだろうか。

 これらの問いに少し考えを巡らせると、「株価と為替の値動きは連動する」、「株式市場と不動産市場は連動する」というセリフがいかに曖昧で説得力に欠けるかを認識することとなる。

 過去の株価、為替、地価の動きを分析すると、「株価が1%上がった時にx%の確率で為替はy%だけ動く」ということが言えるようになる。そうやって過去のデータを統計的に分析する手法(回帰分析や仮設の検証)を学ぶのが、「確率・統計」の1つの内容であった。

 株価は様々な要因で動いており、その様々な要因がどの程度株価にインパクトを与えるのかを分析したいという投資家は多いはずだ。その際には、回帰分析を行うこととなる。そう考えると確かにファイナンスを学ぶ上で、統計は必要だと理解できる。しかし、すぐにはファイナンスと統計が結びつくということは認識できない。

統計分析は
仕事で使える重要なツール

 実はこれはファイナンスに限ったことではない。特に文系学部出身の人たちにとって、仕事で重要なスキルは営業、企画、コミュニケーションやプレゼンテーションスキルなどであり、それらのノウハウが書かれた本は書店にたくさん置いてある。よもや統計が仕事に役立つとは思わないのだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
保田隆明氏の著書「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」好評発売中!

経済・金融のグローバル化に伴い、企業を取り巻く環境は複雑化。ビジネスパーソンにとっても、経営戦略とファインスに関する知識は不可欠になっています。本書では、資金調達やM&Aなど、経営戦略とファイナンスの関係を基本から徹底解説します。 2100円(税込)

話題の記事

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
保田氏ブログ

 


保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

仕事と両立しながら大学院に通い始めた保田隆明が、大学院で学ぶからこそ見えてきた新しい視点で、世の中の「経済・金融ニュース」をわかりやすく解説する。

「保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方」

⇒バックナンバー一覧