民主党の公務員制度改革関連法案(国家公務員法改正法案)の内容が明らかになりました。昨年の政権交代のときに国民が民主党にもっとも期待したのは「脱官僚・政治主導」であり、この法案はそれを体現するものとなるはずなのですが、法案を読んで呆れました。掛け声倒れで中身ゼロです。自民党政権が昨年作った法案より後退している部分もあります。一体何のための政権交代だったのでしょうか。
幹部人事は何も変わらない
“しょぼい”政治主導
あまりにひどい内容で詳細に説明したらきりがないので、ここでは簡潔に問題点を指摘したいと思います。今回の法案には4つの大きな問題があります。
第1の問題点は、“政治主導の幹部人事”と叫んでいる割には、実際には機能しない仕組みを採用しているということです。政権の説明を鵜呑みにしたメディアは「次官を部長に2段階降格できるようになる」と報道していますが、法律の規定を読むと誇大広告も甚だしいと言わざるを得ません。
幹部人事の仕組みとしては、まず官邸が幹部候補者名簿を作成し、各省庁の大臣は官邸と協議しつつ、その名簿に記載されている者の中から幹部職員を任用するとなっています。
おそらく名簿は次官・局長クラスと部長クラスの2種類になりますが、まず次官から局長へと異動する場合は降格ではありません。次官と局長を職制上同一の段階にしたので、正確には横滑りです(その割には次官の給料は下がらないようですが)。
次に、次官・局長から部長への降格は制度上あり得ますが、実際には3つの特例要件(他と比して実績が劣る、別の人の方がより優れた業績を挙げると見込まれる、転任させる適当な官職がない)を充たす場合に限られます。つまり、降格の要件が法律上非常に厳しくなっている(第78条の2)ので、実際には起き得ないのです。そして、部長クラスから課長クラスへの降格については法律上何も規定がなく、公務員の身分保障が適用されて絶対に起きません。
その結果、何が起きるでしょうか。
天下りも出来ない中で、部長クラスになった官僚は定年までずっと役所に居座るのです。幹部の降格が出来ないのですから、名簿に入っている幹部の中から政治家がお気に入りを選ぶことはできますが、若手官僚や民間人の抜擢人事など不可能です。そして、名簿に載っているたくさんの幹部をきれいにポストにはめ込むのはすごく複雑なパズルですので、政務三役でそれを仕切るのは不可能であり、結局は今までと同様に官僚の側で人事を仕切ることになるでしょう。なんかしょぼい政治主導です。