2014年のノーベル賞物理学賞に選ばれたのは、青色発光ダイオード(LED)を発明した3人の日本の科学者だった。これにより、実用的な白い光のLED電球が製造できるようになり、照明の世界に「革命」をもたらした。その「革命」を世界の貧困層にまで広げている団体がある。コペルニクという米国のNPO(非営利団体組織)だ。それまでと全く異なる“ビジネスモデル”を構築し、新たな「流通」の仕組みまで整えたことで世界の大企業が注目している。代表を務める元国連職員の中村俊裕氏に聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)
――まず、コペルニクの“ビジネスモデル”について教えてください。
Photo by Takeshi Kojima
コペルニクは、貧困層と呼ばれる世界の人々の生活を改善させるため、貧困層の課題を解決するようなシンプルで便利な製品を提供しています。
例えば、今回ノーベル賞受賞で話題になったソーラーライトがその一つです。これは、太陽光パネルを取り付けたランタン型のLED照明で、米国のベンチャー企業が開発したものです。当初、電化率が10%以下といわれていた東ティモールの村に届けました。
ここは、日本から3日もかかる遠く離れた場所です。電気も通っておらず、夜になると真っ暗で何もできません。明りは灯油を利用していたため、火事の恐れもありましたし、その煙による健康被害もありました。そのため、貧困から抜け出すことができない要因の一つになっていたのです。
それが、ソーラーライトが届いたことで、子供たちは夜でも安心して勉強ができるようになり、女性も織物を織って仕事ができるようになりました。さらに、月収の20%もかかっていた灯油代がほぼなくなり、教育や薬代にあてることができるようになったのです。シンプルなテクノロジー製品一つで劇的に環境を変えることができた一例ともいえます。
もっとも、このような製品はそれまでも作られていました。ですが、それを貧困層まで届けるのは、物流費用の問題などで非常に困難でした。そこでわれわれは、途上国のNGOや協同組合などと連携して、ベンチャー企業などが立ち入れない地域を開拓していったのです。