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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

「量的金融緩和」は日本の発明品!
課題先進国の行く末を、世界が見守っている

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第8回】 2015年1月13日
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コンサバ日本は自然に治るが
それは淘汰の始まりだ

 では、日本の企業はコンサバティブな状態から抜け出すことはできるのでしょうか。

 多くの企業は内部留保をため込んでいますが、こうしたお金をうまく活用できるかどうかで生き残れる企業かどうかが明らかになってくると思います。でも、これはある意味、自然に起きること。つまり、私はコンサバティブな日本の状態はいつかどこかで自然に治ると思っているのです。

 たとえば、「失業率は低いのに、賃金が上がらない」という日本の状況は海外から見ると、ものすごく不思議です。さらに、「中途採用で転職すると給料が下がるのが普通」というのも理解できません。

 米国では「給料が上がるから転職する」のが転職する最も大きな理由です。外資系企業の進出や外国人経営者の増加などによって、こうした日本人の“常識”も少しずつ変わり始めているのではないでしょうか。

 一方、企業も優秀な人材を雇うためには、それなりの給料を支払わなければならないのは当然のことです。日本では、正社員は解雇できないため、非常勤や派遣社員を多く雇う傾向がありますが、これはよくないと思います。

 日本では正社員以外で働く人はおよそ4割ですが、立場が不安定な派遣などでは、長期的な意味で企業にとっても働く人にとってもメリットはありません。効率的な投資を考えれば、こうしたことも自然と改善されていくでしょう。

 「なぜ金利がこんなに安いのに企業はお金を借りて投資しないのか」という問いも、海外メディアからよく出る質問です。極端な話、米国ならお金を貯めこんでビジネスチャンスを逃している経営者に対して、株主が訴訟を起こすはず。

 円安によって海外からのM&A(買収)や投資がしやすくなりますが、そのことによる外圧も、日本の変化を促すことになります。

 状況が変わりつつある今こそ、経営者も社員も自ら行動を起こさなければ生き残ることはできません。コンサバティブな状態から抜け出す意欲を持たなければ、明るい未来は決してあり得ないのです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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