14日、昨年末の衆議院選挙で編成が遅れていた2015年度政府予算案が閣議決定された。安倍政権にとっては、3回目の予算となる。当初予定していた消費増税(税率8%を10%へ引き上げる)は見送られたものの、2015年度までに基礎的財政赤字を半減するという目標は達成できる見通しだ。果たして、政府が宣伝するように、「強い経済の実現による税収の増加等と、聖域なき徹底的な歳出削減を一層加速させることにより、経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の進展に寄与するという好循環を作り出す」(「平成27年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」2015年1月12日閣議了解)ための予算を言えるか、緊急にレビューする。

たなか・ひであき
明治大学公共政策大学院教授
1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年・日本評論社)、『日本の財政』(2013年・中公新書)。

各省庁が持っている別の財布

 2015年度予算案についての財務省の資料によると、一般会計の歳出総額は、前年度(当初)と比べて0.5兆円増えて96.3兆円となる。ポイントとなるのは税収増であり、前年度より4.5兆円増えて54.5兆円となると見込んでいる。

 これを財源として、新規公債発行額(財政赤字)は、前年度より4.4兆円削減され、36.9兆円となる。税収増の残り0.1兆円とその他収入の増を併せると0.5兆円であり、これが歳出の増加に使われる。歳出の中身を見ると、社会保障関係費が1兆円、国債費が0.2兆円増えるものの、地方交付税交付金が0.6兆円減ることなどから、歳出総額の増加は0.5兆円にとどまる。上記以外の主要経費で前年度より増えるものは、防衛関係費(953億円増)、公共事業関係費(26億円増)であり、文教及び科学振興費、経済協力費、エネルギー対策費などは減額となっている。

 2015年度一般会計予算の大まかな数字を見ると、実に「美しい予算」であると感じる。財務省を代弁すれば、概ね次のようになるだろう。税収増をほぼ全額使って公債発行額を減額するとともに、歳出の効率化などにより財源を捻出し、社会保障関係費の自然増(予算編成の当初において0.8兆円と見積もられていた)や充実、防衛関係費などの増に対応した。限られた財源を必要な分野に重点的に充て、メリハリをつけたというわけである。消費増税を見送ったことから、社会保障充実のための財源は減ったものの、子育て支援などの予算は確保されており、評価できる点もある。

 予算の数字を見る限り、これはもっともらしい説明である。しかし、これをそのまま丸ごと信じることはできない。各省庁には別の財布があるからである。2015年度予算案を決定する前に、政府は2014年度補正予算案を決定している。この補正予算はかなり膨らんでおり、2015年度予算に計上する予算を補正予算に移しているともいえる。