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未知のECB量的緩和は本当に機能するか? 

――菅野泰夫・大和総研シニアエコノミスト

菅野泰夫 [大和総研シニアエコノミスト]
2015年1月28日
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量的緩和政策とマイナス金利政策の相反する組み合わせが上手く機能するかは、今後の大きな注目点と言える
Photo:REX FEATURES/アフロ

ECB、国債買い入れ型の
量的緩和をついに発表

 1月22日、欧州中央銀行 (ECB) は定例の理事会を開き、注目されていた国債買い入れ型の量的緩和策(以下、QE)の導入を決定した。買い入れ資産は、国債、政府系機関債、EU機関債が対象とされ、既存のカバードボンド買い入れプログラム(CBPP3)および資産担保証券買い入れプログラム(ABSPP)を含めた合計で、月額600億ユーロ、総額1.1兆ユーロを超える見通しである。

 買い入れの期間は、今年3月から来年の9月まで約1年半実施されることが予定されている。注目された国債などの買い入れ金額は、(ドラギ総裁が会見の中で述べたように)過去のプログラム(CBPP3、ABSPP)の買い入れ額のペースを勘案して推計すると、総額8000億ユーロ以上となると予想される(CBPP3は13週目、ABSPPは9週目までの買い入れペースが継続すると仮定して、大和総研推計)。

すげの・やすお
1999年大和総研入社。年金運用コンサルティング部、企業財務戦略部、資本市場調査部(現、金融調査部)等を経て、2013年4月より現職。担当は欧州経済・金融市場。著書に『バーゼル規制とその実務』(金融財政事情研究会、2014年2月、共著)。

 また、中期的なECBのインフレ目標である2%間近(2%に近いがそれ以下)に達するまで、QEは行われるとしている。裏を返せば、2%近くを達成できなければ追加のプログラムが予想され、事実上日銀が導入している無制限型の緩和政策と言えよう。ABSPP、CBPP3を除く国債などの買い入れはECBへの出資比率(キャピタル・キー)に応じて行われ、残存期間が2年から30年までが対象となった(平均残存期間は不明)。

 EU/IMFの支援プログラム国も買い入れ対象とされたために、懸念されていたギリシャおよびキプロスともに該当することとなった。ただし、債券の価格形成機能が麻痺することを避けるため、買い入れは流通市場(セカンダリー)から行い、各銘柄について発行額の25%、単一発行体の債務の33%までが買い入れ上限とされた。この点は、今後新発国債の大半を買い入れる日銀の量的緩和とは異なると言える。

量的緩和賛成派側が勝利に見えるも
実際は反対派に大幅譲歩

 今回の理事会で最も大きなリスクは、(全会一致を好む理事会において)結果的に意見が集約できず“通貨ユーロの規律破綻”を招き、各国の関係修復が不可能になることであった。一部の理事の根強い反対意見から生じる1票は、ユーロ域内の分断化を決定づける恐れがあり、単一通貨存続に対する否定的なインパクトの大きさは計り知れなかったと言えよう。

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すげのやすお/1999年大和総研入社。年金運用コンサルティング部、企業財務戦略部、資本市場調査部(現、金融調査部)等を経て、2013年4月より現職。担当は欧州経済・金融市場。著書に『バーゼル規制とその実務』(金融財政事情研究会、2014年2月、共著)


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