日本料理は、もはや日本人のものではない。パリの街を歩いていると、至るところで日本料理屋(Restaurant japonais)に出くわす。パリから郊外に出ても、日本料理屋は当然のようにそこにある。ブームじゃない。すでに日本料理はパリっ子にとって定番の選択肢だ。

すでにフランス食化している日本料理

 欧州の中でも日本への関心が高いフランス。首都パリでの日本料理の様子を見ていると、世界での日本料理の今後が見えてくる。この国で日本食は、どこへ向かおうとしているのか。

 海外で日本料理屋の暖簾をくぐった際に、そのメニュー内容に違和感を覚えた人は多いはずだ。すしの隣に焼鳥があり、隣にはうどんが並ぶ……海外の多くの日本料理屋では、一つの店にすべての和食のジャンルが混在することが多い。フランスも同様で、「Sushi」と書かれた看板を出している店が焼鳥を扱うし、うどん屋がすしを握る。典型的な和食メニューを、一通り扱っているのだ。 

 フランスでの人気メニューは、すしを筆頭に、焼鳥、てんぷら、うどん、ラーメン、ギョーザ、どんぶり、枝豆……。にぎりは、主にサーモンかマグロと相場が決まり、そこに巻きずしが加わる。ちなみに巻きずしはフランス語で「Maki」と呼ばれる。ギョーザ(Gyoza)、どんぶり(Donburi)なども、すでにフランス語だ。

 その中で、とりわけフランス人の味覚を虜にするのが、砂糖としょうゆが組み合わさった、甘辛い味である。特に鰻の蒲焼にかけるタレは、とても評判がいい。ごはんにしょうゆという組み合わせが好きな人も多く、以前フランス人のお宅へお邪魔したら、日本人が来るということで、ご飯にしょうゆをかけただけ、というご馳走を出されたこともあった。こういう状況から、ご飯にかける専用の、甘辛いしょうゆまで売り出されている。 

日本料理の未来を示唆するパリの和食事情ご飯にかける専用しょうゆ(写真中央)は、どこのスーパーマーケットでも手に入る