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組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

組織をむしばむ“社内の嫉妬”はこうすれば消える

リクルート成長の原動力となった「褒める文化」のリアル

秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
【第12回】 2015年2月3日
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拍手、垂れ幕、花束……
有名な「褒める文化」は「強制」だった!

 昨年10月にリクルート(以下R社)が上場をした際には、タイミングを逸し、識者の方たちのコメントをただ読んでいるだけに終わってしまった。しかしながら、個人的に以前からまとめておきたいと思うことがあったので、この場を借りてR社の組織に対する私なりの見解を記しておきたいと思う。

 R社を紹介するときに必ず「褒める」という文化があることが語られる。誰かが目標(ノルマのことなのだが、“自分で決めた”というニュアンスをつけるために目標という言葉を使う)を達成すると、名前入りの垂れ幕が下がり、オフィスは「おめでとう!」の声と拍手でいっぱいになる。新入社員のころの私は「隣の課のことだから」と黙ってぼーっと眺めていたのだが、先輩に無理やり立たされ、隣の課まで連れて行かれた。そして、一緒になって「おめでとう!」と言わされ、拍手と握手をさせられた。ときには課長から「花を買ってこい」と近所の花屋まで走らされ、抱えきれないような大きな花束を「目標を達成した誰かさん」に届けることもあった。

 「目標を達成した誰かさん」「成功した誰かさん」は、拍手の中で「なぜ自分は達成したのか、成功したのか」を雄弁に語るのが決まりだ(場合によってはその内容が社内報に掲載される)。はじめこそ「頑張ったからじゃなくて、たまたまクライアントの懐具合が緩かっただけだろう」などとシニカルな見方をしていた私だが(実際には、シニカルな見方が正しいことが多い)、毎回毎回拍手と握手と「おめでとう!」を共有していると、次第に斜に構えてもいられなくなってくる。自分の中に「褒める文化」が浸透して、その瞬間を共有することに快感を覚えるようになる。

 結局、一年もしない間にすっかり「褒める文化」が当たり前のこととなり、三年も経つ頃には事情を知らない新入社員や中途入社の社員を無理やり立たせて「拍手して握手するんですよ!」と引きずって行く側になっていた。今でも、Facebookなどで誰かの良いニュースを見かけると「おめでとう!」とコメントせずにはいられない。習慣とは恐ろしいものだ。

 ここまで言えばお分かりだろう。あの会社で行われていたのは「褒める文化」などという生易しいものではない。「褒めることを強制する文化」なのだ。

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秋山 進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]

リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

著書に『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『転職後、最初の1年にやるべきこと』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』『愛社精神ってなに?』などがある。


組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

日本には数多の組織があり、多くの人がその中に属しています。組織は、ある目的のために集まった人たちで成り立っているにも関わらず、一度“病”にかかれば、本来の目的を見失い、再起不能の状態へと陥ります。しかも怖いのが、組織の中の当人たちは、“病”の正体が分からないどころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気づけない点です。

この連載では、日本の組織の成長を阻害している「組織の病気」を症例を挙げて紹介。コンプライアンスの観点から多くの企業を見てきた筆者が考える治療法も提示します。

「組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進」

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