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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

「育休明け社員」に寛容な女性課長の黒い本音(上)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第3回】 2015年2月17日
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 政府や経済界、メディアや有機者は「多様な働き方」を提言する。その1つに女性の職場進出があり、「育児をしながら働くことができる職場」づくりの重要性が唱えられる。

 これが、今の企業社会を覆う「空気」となり、1つのタテマエとして職場に浸透しつつある。しかし、実際の職場のホンネはそれとは大きく異なる。ホンネは、「みんなで支えるレベルに達していない人は追い出そう、厄介者扱いをしよう」という部分にある。

 今回は、育児休業を終え職場復帰した女性が働く職場に潜入し、上司や同僚らから聞いた話を基に、職場の暗部に迫りたい。


私生活を犠牲にしながら
育児休業明け社員を守る女性課長

 「うちも育児休業し、復帰するケースが増えている。復帰しても、元のペースで仕事を進めることがなかなかできない。体調が戻らないみたいね。それで、この人がフォローしている。仕事の量は、こんなに(手を広げて)膨れ上がっている」

 50代後半の専任部長が左隣に座る、50代前半の女性課長の奮闘を称える。専任部長は「一時定年」(56歳)でいったん部長職を離れ、1年前に専任部長となった。「役職定年」に近いものだ。

 女性課長は「ええ」「はい」とかすかに聞こえるような声を出し、時折軽く笑ったり、うつむいたりする。どのように振る舞えばいいか、困っているようだった。筆者は、このコンビとは10年ほど前に知り合った。それ以降、年に数回のペースで雑誌などを一緒につくっている。

 ここは、社員数が500人ほどの教材編集販売会社。民間企業や病院などで働く人向けの「社員教育」ビデオ、DVDなどをつくっている。業界では、比較的上位に位置する。専任部長は、もっと何かを言いたいような雰囲気を見せていたが、黙ってしまった。女性課長が独身で、子どもがいないことに配慮をしたのではないか、と筆者は察した。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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