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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

人民元が存在感を増しています。
中国の通貨政策について教えてください

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第5回】 2015年2月18日
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 筆者は、清華大学大学院(北京)に招聘され、非常勤講師として講義をしたこともあり、中国経済を多面的に勉強してきました。また、筆者の書籍が中国人民銀行によって中国語訳されて教科書として採用され、中国当局に招聘され北京で特別講義も行いました。昨年には、中国人民銀行による金融政策についての政策提言論文コンクール(人民銀行に口座を持つすべての世界中の金融機関が提出しなければならない)で、外国人としては最上位の3位に入賞しました(日本人としての入賞は一人だけ、同じく3位にシティバンクのエコノミストが入賞していました)。最近では、とくに通貨としての人民元を研究しています。

他国の経済政策をよく勉強している中国

 中国は先進国の経済政策をよく勉強しており、多方面でその良さを取り入れています。以前(日中関係悪化前)ある官庁で仕事をしているときに、中国からの研修生の方がいて、彼は通貨政策と土地政策を学んでいるとのことでした。中国の状況について聞いたところ、通貨政策では「米国の影響で円高になって経済に悪影響があった」そして「土地政策では総量規制は中国はやらない」と言っていました。さらには、日本は農業の生産調整など計画的な政策を実施していて、安定している政府だと認識し、特に日本の官僚制度を学んでいるとのことでした。

 実際、中国の経済政策は様々な国の政策をうまく取り入れているように見受けられます。たとえば、発展途上国(新興国)として工業化を進めていますが、農村地帯の労働者を沿岸部の工業地帯に送り込んでいることで、農村部は男性不足や過疎化が進んでいるようです。これは、若い労働力を地方から集めた戦後の日本と同じではないでしょうか。後ほど解説しますが、通貨のオフショア化の進め方は日本から、多数の通貨を組み合わせた通貨バスケット制はシンガポールから、また通貨の流通域の拡大(国際化・基軸通貨化)は米国から学んで導入しているように考えられます。

通貨政策には“水平型”と“垂直型”がある

 “通貨”は筆者の専門の一つですが、なかなか一般の方には整理が難しいのかもしれません。通貨政策には、筆者が整理して名づけましたが“垂直型”と“水平型”があります。変動相場制とか固定相場制とか、為替レートの上下の動きをコントロールするのが“垂直型”で、国際化や基軸通貨化など、通貨の流通域を広げていくのが“水平型”です。ここを分けて考えることが大事になります。

 ちなみに、日本円の「円」ですが、もともとは「圓」という字を書きました。この「圓」をよく見ますと、国構えの中の「員」を簡単にしたのが、人民元の「元」です(発音も日本と同じ:ゲンとは言わない)。また韓国のウォンは漢字では「圓」の字を使う。つまり、円も元もウォンも、もともとは同じ「圓」だった可能性が高いのです。ちなみに、現在の通貨も人民元は「¥」、日本円も「¥」です。ウォンは発音が違うためWをベースとした「?」を使っています。つまり、東アジアでは過去に「圓」という統一通貨があった可能性があるのです。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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公式サイト:http://www.shukuwa.jp/    
連絡先: info@shukuwa.jp

 


宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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