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山崎元のマネー経済の歩き方

時価評価をめぐる議論の行方

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第53回】 2008年10月21日
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 サブプライム問題の対策を論じる際に、いまだ大きな声にはなっていないが、資産の「時価評価を停止するといい」という種類の意見を海外からも聞くようになった。銀行が保有する資産を時価評価すると、損失が出て、自己資本が不足し、信用危機を招くので、時価評価を停止すればいいというのがおおまかな骨子だ。

 たとえば不動産証券化商品を、仮に会計上例外的に取得価格で評価しておくなら、当面、損失は出ない。また、このように評価された保有資産を売却すると損が出るから、資産の投げ売りを抑える効果もあるだろう。

 公的資金を使うわけでもないし、一見上手そうな方法だが、これではダメなのだろうか。

 まず、この方策の最大の目的は、銀行の信用を保ち、安定した資金取引を確保することだ。そのためには、株価も下落しない状況が望ましい。

 しかし、銀行は他の銀行に対する与信を判断するときに、相手の資産の現実に処分可能な価値に注目するだろう。

 また、株式を評価するファンドマネジャーやアナリストも、会社(銀行)のより現実に近い純資産価値を評価しようとする。

 つまり、赤字や資本不足が会計上は存在しなくても、取引上重要な関係者は、真の価値を推測しようとしてイメージをつくるはずだ。まして、相手が銀行である場合、同業の懐具合はよくわかるだろうし、正確にわからない場合は優しめよりは厳しめに評価するのが正しい銀行家の態度だろう。

 ここで仮に主な銀行経営者のあいだでお互いを甘く評価しようという「談合」が成立したとしても(経営者は責任を逃れたいから成立の可能性はある)、談合は常に崩れる可能性があるし、ファンドマネジャーは財務内容の怪しい銀行の株式を売りたたくだろう。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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