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医療・介護 大転換

4月からの介護保険制度、利用者に得か損か

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第24回】 2015年2月18日
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介護報酬切り下げで
利用者の利用料は下がるが…

 介護保険制度の4月からの報酬額が決まった。厚労省の諮問機関、社会保障審議会介護給付費分科会が2月6日に介護事業者に支払う2015年度から3年間のサービスごとの報酬額をまとめた。総額を2.27%切り下げることは予算編成の中で政治決着しており、それに基づき各サービスの基本報酬や加算内容などを決めた。

 介護報酬が下がると、それに連動して利用者が支払う1割負担分の利用料も下がる。利用者にとっては利用料が安ければ安いほどいいと思われるが、そう単純ではない。これまでと同じサービスなのに事業者への報酬が下がれば、スタッフの配置人数やサービスの質が低下しかねないからだ。

 高齢者ケアの基本方針が、施設入居から身近な地域での継続的な暮らしへ重心を移していくことは、先進各国で一致している。誰しも初対面の入所者と共に遠方の施設で日々を過ごすより、住み慣れた地域で知己の人に囲まれて暮らす方が満足度は高い。

 日本では、厚労省が「地域包括ケアシステム」と命名して、その実現を目指している。方向性は間違っていない。

 となると、施設事業者の報酬を上げて、より施設を増やす策は賢明でない。地域で活動する在宅サービス事業所の報酬を上げて事業者の意欲を喚起し、多くの拠点を設けるように仕向けた方がいい。できれば、施設ケアと同等の24時間切れ目ないサービスが地域で得られるようにしたい。

 それによって、利用者の1割負担が数百円ほど増えても、長期的に見れば得るものが大きい。自宅やそれに近い集合住宅での継続的な暮らしを保障されれば、障害が増しても安心度は変わらない。こうした地域包括ケアの実現に近付けたのか、利用者目線で介護報酬の改定を点検してみる。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

「医療・介護 大転換」

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