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田岡俊次の戦略目からウロコ

ウクライナ紛争の拡大で、世界を冷戦に戻すな

田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
【第48回】 2015年2月19日
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停戦合意は
成立しなかったも同然

 東部ウクライナでの停戦を目指す4首脳会談(ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランス)は2月11日夜から12日昼過ぎまで徹夜で16時間の協議の後、共同声明発表に漕ぎ付けた。これを受けて、紛争当事者であるウクライナ政府と親露派は同日停戦合意文書に署名し、15日午前0時(日本時間同7時)から停戦に入った。

 だがその後も親露派が支配している2大重要拠点、ルガンスク市(ルガンスク州都)とドネツク市(ドネツク州都)の周辺や、その両市の中間にあるデバリツェボ付近で砲撃が続いた。

停戦合意後も戦闘は止まない Photo:REUTERS/AFLO

 デバリツェボは東ウクライナを南北に貫く国道、鉄道と、南ロシアから西ウクライナに続く国道、鉄道が交差する交通の要衝で、ウクライナ政府軍はここを約6000人の兵力で守ってきたが、親露派軍に包囲され、補給も脱出もできない状態となっている。ここが陥落し多くの守備兵が捕虜となれば政府軍の敗北は明確となるだけに、それを避けるためにドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領は急遽停戦仲介に乗り出したのだ。

 だが停戦合意で仮に他の地点ではおおむね戦闘が止んでも、最大の焦点デバリツェボで戦闘が続けば停戦合意は成立しなかったも同然だ。

 親露派の指導者ザハルチェンコ氏は「デバリツェボは停戦合意の対象になっていない」と発言し、OSCE(欧州安保協力機構)の停戦監視団の立ち入りも拒否した。他方、ウクライナ政府も「停戦にならない以上、(合意事項にある)重火器(大砲、ロケット砲など)の撤去はできない」とし、双方とも停戦合意を履行しない意向を示している。

 昨年9月5日に両者が署名した停戦合意の後も散発的戦闘が続き、11月には本格的内戦が再燃した。この昨年の停戦はロシアが仲介者となったものだったが、それをウクライナが呑んだのは、政府軍が大敗して各地で包囲され、2000人以上の捕虜を取られていたためだ。

その際の停戦合意はウクライナ東部のドネツク、ルガンスクの両州(ロシア語人口が約70%)での親露派支配地域に3年間の「特別の地位」を認め(1)独自の地方選挙(2)ロシア行政機関との関係強化(3)地元住民からなる警察隊の組織(4)裁判官、検察官の任免権などを認める内容で、実質的には分離の承認に近かった。同月16日にウクライナ議会はそれを実施するための法案を可決した。

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田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]

1941年、京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当、米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員、筑波大学客員教授などを歴任。動画サイト「デモクラTV」レギュラーコメンテーター。『Superpowers at Sea』(オクスフォード大・出版局)、『日本を囲む軍事力の構図』(中経出版)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』など著書多数。


田岡俊次の戦略目からウロコ

中国を始めとする新興国の台頭によって、世界の軍事・安全保障の枠組みは不安定な時期に入っている。日本を代表する軍事ジャーナリストの田岡氏が、独自の視点で、世に流布されている軍事・安全保障の常識を覆す。さらに、ビジネスにも役立つ戦略的思考法にも言及する。

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