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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

職場いじめの復讐に燃える中年ストーカーの執念(上)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第4回】 2015年2月24日
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 職場でのいじめについて論じるメディアは多い。そのほとんどが、筆者にはタテマエに見える。端的に言えば、いじめとはその社員の人格や名誉、誇り、人権を否定する行為でしかない。いじめを受けている人が、時には理屈抜きに相手に報復し、復讐をすることは、一概に批難されるべきではないと思う。

 今回は、落ちこぼれに近い40代のディレクターからいじめを受け、今はその職場を離れた後、反転攻勢のきっかけを待つ放送作家を取材した。この男性の執念に満ちた生き方を、「ストーカー」として揶揄することはたやすい。

 だが、タテマエばかりがはびこる企業社会において、彼はホンネむき出しの貴重な生き方をしている、と捉えることもできるのではないだろうか。あなたは、この作家から何を感じるだろう。いじめを受けたら、どのように行動するだろうか。


「ざまあみろ。お前は俺に何をした?」
ストーカー作家が呪うかつての同僚ディレクター

© frank peters - Fotolia.com

 放送作家の小堺(仮名/42歳)は、ほぼ毎日、フェイスブックを見る。そんな自分の姿を「ストーカー作家」と笑いながら認める。筆者とは、十数年の付き合いだ。

 狙いを定めているのは、放送局の関連会社(正社員250人)に勤務する内村(仮名/52歳)のウォールだ。書き込みを読む限りでは、内村はここ数年で家族を何人か亡くしたらしい。

 「今日、妹が神に召された」「父が生きていた頃は……」

 こんな言葉が随所に出てくる。かねてから、キリスト教に熱心だったという。だからなのか、人の生死にかかわることがいくつも書かれてある。

 小堺は、書き込みを冷めた眼差しで見つめる。むしろ痛快な思いになっている。「ざまあみろ。お前は、俺に何をした? あれほどに苦しめただろう? こういうのを、因果応報と呼ぶんだよ」

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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