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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

株価に対する「米利上げの脅威」の再検討

――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
【第165回】 2015年3月11日
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 3月初に発表された2月の米雇用統計は、予想を超える力強さであった。前月比29.5万人増は、前月の増加数(23.9万人)を上回る。このペースで雇用拡大が続けば、FRB(米連邦準備理事会)は6月16・17日のFOMC(公開市場委員会)の際にも、利上げに着手するだろう。

 なぜ、これほど米利上げが注目されるのか。理由は、株式市場にとって金融引き締めが大きな脅威になると、多くの人が見るからだ。象徴的なのは、ITバブルと言われた1999年の株価上昇である。当時の株価上昇は、1999年6月から開始された利上げによって見事に潰された。

 その影響は、米株価のみならず、日経平均株価にも及んだ。今の日経平均株価の前回高値(2000年3月の2万0809円)は、ITバブルの時期である。ITバブル以降、日本株は15年間も当時の高値を抜けないでいる。それほど米利上げは、株式市場にとって「鬼門」だと言える。

なぜ「6月利上げ」なのか?
2004年と重なる経験則

 ところで、なぜ、6月のFOMCが利上げに着手する起点と考えられているかを説明しておく必要があるだろう。FRBが前回引き締めをしたのは、11年前の2004年6月である。最近のFOMCの声明中のガイダンスでは、2004年の利上げ前とよく似た情報発信が行われている。

 2014年12月の声明文では、金融政策の正常化に向けて「辛抱強くいられる(can be patient)」と書き加えられている。これは、利上げが近づいていることを示す。2004年1月のFOMC声明文では、「辛抱強くいられる」という表現が登場して、その後5月に「辛抱強く」が落とされて、6月に利上げを実施している(図表1参照)。

 今回も、2015年3月に「辛抱強く」の表現が修正されると、そこから利上げが至近距離にあると理解できる。そうした読み筋から、利上げのタイミングは2015年6月のFOMCだという見方になる。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

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