ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

「中国人は信用できない!」と思い込むと
現実がさらにそうなる心理的な罠

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第21回】 2015年3月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

国際的な職場で蔓延する
「国別のステレオタイプ」の危険

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 どの職場でも、「人に迷惑をかける奴」は好かれない。中にはスティーブ・ジョブズや松下幸之助のように、言っていることがコロコロ変わって周りを振り回すものの「超有能」という迷惑者もいることはいるが、少数だ。人に迷惑かける上に仕事ができない、人間的にも尊敬できない、というような人は、当然職場の雰囲気を悪くするだけだ。さらに、そういう人が正社員で非正規社員に仕事を押し付けたり、管理職で一般社員に迷惑をかけている場合、職場はより不機嫌となる。

 そういう人を観察しているうちに、人は「迷惑者」について、ある種のステレオタイプを持つことになる。例えば、ネットなどで、社会性がなくクレーマーのように振る舞い、決して自分の非を認めない団塊の世代のおじさんをひとくくりに「老害」と称したり、20代前半の若者が社会常識や知識がないことで、やはりひとくくりに「ゆとり」などとレッテルを貼るのも、ステレオタイプである。

 そして、それが国際的な職場になると、国別のステレオタイプが出てくることがある。一つ例を紹介したい。

 私の友人は、大学で遺伝生物学の博士号を取ったのち、某企業の研究所に勤めている。彼のもとには提携先のさまざまな国から研修生として、大学院~研究員レベルの若手研究者がやってきて、基礎的な実験方法などを学んでいく。英語が堪能で、大学教員の経験もある友人は、あるときインドから来た研究生の指導を引き受けることになった。

 その研修生はインドで博士号を取得しており、インドでは一人前の研究員だったという。当然、基礎的なことはできるだろうと友人は思い、彼に簡単なデータ分析を任せた。いくつかのデータ値を足したり引いたりして新しいデータを作り、平均値などの簡単な統計値を出すだけの仕事だった。友人がやれば数時間もあればできる仕事だったが、まずは仕事に慣れてもらうために彼に頼んだ。

 彼はすぐに引き受けたものの。頼んでから3日経ってもできていない。どうなっているのかを聞くと、「忙しい」「そんなに急ぐものなのか」「いつまでにやれとは言われていない」などと言い訳が返ってきた。彼が、この程度の仕事はすぐにできるので、本日中にやってほしいと言うと、「その程度の仕事なら私がやる必要はない」「誰か他の人にやらせればいい」と言い返す。

 友人は嫌な予感を持った。その研究所は、生物の脳神経活動を調べるため様々な研究を行っていた。そのインド人の留学目的は、魚の神経活動を調べるための実験テクニックを学ぶことだったので、友人は、そこまで言うなら、と、本丸の実験の補助をさせてみることにした。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧