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だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

理念なき「東京オリンピック招致」の醜い競争

谷口源太郎 [スポーツジャーナリスト]
【第5回】 2008年8月25日
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 北京オリンピックの期間中、競技場外で“別の競争”が繰り広げられていた。

 IOC(国際オリンピック委員会)の1次選考で残されたシカゴ、東京、マドリード、リオデジャネイロの4都市にとって北京は、2016年オリンピック招致を競う重要な舞台であった。IOC理事会の1次選考(11項目について評価)で、東京は総合評価1位だった。それを受けて招致委員会会長の石原慎太郎・都知事は、記者会見で招致合戦への突入宣言をした。

 「まだ、あまり跳び上がって喜ぶことではない。これから、複雑で醜い競争が始まる」

 北京は、その醜い競争の「第1ステージ」とされたのだ。ただ、IOCは、招致活動の過熱化を避けるために、あくまでも立候補各国のオリンピック委員会が管轄するホスピタリティーハウス内での活動しか認めなかった。他都市の集票活動については不明だが、東京の場合は、JOC(日本オリンピック委員会)が北京市内にあるホテル「ニューオータニ長富宮」に設けたホスピタリティーのための「ジャパンハウス」(2500平方メートル、総費用2億8000万円)を活動の拠点にした。報道もされたがそこでは、広告代理店・電通、ADK制作の展示や映像によって、東京がアピールされた。

 また、8月17日、同ホテルの大宴会場で、中国の日本大使館、JOC、日本選手団の主催によるパーティーも招致活動の絶好の機会となった。

 そうした北京での巨額を投じた招致活動が果たしてどこまで効果的だったのか、大いに疑問だ。というのも、本来なら招致活動の先頭に立つべき招致委員会会長の石原慎太郎・東京都知事は、開会式とパーティーに出席(共に一泊)しただけだった。「三国人」発言に象徴されるような反中国の思想信条が石原氏の北京滞在を拒否させたのかもしれない。

 北京オリンピック終了とともに、招致活動は、来年10月2日の投票に向けて次の「第2ステージ」へと進むことになる。それに向けて、JOCは東京への1票確保を狙って、IOCアスリート委員会委員の改選【※注1】に陸上男子ハンマー投げの室伏広治選手を立候補させていた。しかし結果は、落選。思惑はずれに終わった。

【※注1】
IOCアスリート委員は現在19名。IOC委員も兼務している。今回の北京五輪では4名が改選対象に。今大会に参加した選手たちによって選手村にて8月20日まで投票が行なわれ、21日に結果が発表された。29人が立候補し、室伏選手は15位で落選。テコンドー男子の文大成選手(韓国)、競泳男子のアレクサンドル・ポポフ選手(ロシア)、フェンシング女子のクラウディア・ボーケル選手(ドイツ)、バレーボール女子のユミルカ・ルイザ(キューバ)の4名が当選した。任期は8年間となる。

最後の切り札は
皇室の取り込み?

 「招致活動に皇太子殿下の協力をお願いしたい」という、石原氏の意思表明が波紋を巻き起こした。宮内庁東宮職・野村一成東宮大夫は、「招致活動というのは政治的な要素が強く、皇太子殿下がかかわることは難しい」との見解を表明した。これに石原氏は激怒した。

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谷口源太郎 [スポーツジャーナリスト]

1938年鳥取市生まれ。講談社、文芸春秋の週刊誌記者を経て、フリーランスのスポーツジャーナリスト。スポーツを社会的視点からとらえた批評をてがける。市民の立場からメディアを研究する「メディア総合研究所」会員。フェリス女学院大学非常勤講師。著書「スポーツを殺すもの」(花伝社)、「巨人帝国崩壊」(花伝社)、「日の丸とオリンピック」(文芸春秋)など。


だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

底の浅いスポーツ報道に高騰する放映権料、エージェントの暗躍やスポンサーと協会の利害関係、そしてスポーツを利用する政治家まで。スポーツは純粋な「競技」から、完全に「ビジネス」と化した。スポーツを殺したのは一体誰なのか。暴走するスポーツバブルの裏側を検証する。

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