2015年4月より、大阪市の生活保護費プリペイドカード化モデル事業が開始される。提案したカード会社等の構想では、いずれは失業給付・災害見舞金などの公的給付全体に、プリペイドカードによる給付を拡大する可能性が提示されている。

しかし3月初旬、参加を希望した生活保護世帯はわずか5世帯だった。2014年12月、大阪市・橋下市長が熱を込めて導入を発表したモデル事業は、なぜ、ここまで歓迎されないのであろうか?

利用希望世帯、目標数の400分の1
なぜ生活保護費プリペイドカード化は歓迎されないか?

釜ヶ崎にて。両側に、生活保護で入居できる家賃のアパートと、安価な惣菜の小売店・立ち飲みが並ぶ
Photo by Yoshiko Miwa

 2015年4月、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するモデル事業が、大阪市で開始されようとしている。参加は強制ではなく、あくまで生活保護利用者たちの任意だ。

 しかし3月上旬、参加を希望した生活保護世帯は、わずか5世帯。当初構想では、2000世帯を対象とする予定であった。モデル事業に参加した生活保護利用世帯には、3000円の謝礼金が支払わる予定がある(大阪市によれば未定とのこと)にもかかわらず、まったく歓迎されていないのだ。なぜだろうか?

 3月5日、大阪市で開催された「生活保護問題対策会議」の申し入れにおいて、「全大阪生活と健康を守る会(大生連)」事務局長・大口耕吉郎氏は、生活保護利用者の、

「よく利用する安売り量販チェーン店がカードを取り扱っていない」
 「カードを使う店は割高」
 「1日あたりの利用金額(注:2000円。1ヵ月あたり上限は3万円)を設定されたら、安いときにまとめ買いできなくなる」
 「高齢者はカードは使えないし、馴染みの店で買い物をする」
 「足が悪いから、(個人商店しかない)近所でしか買い物をしない」

 という声を紹介した。今回のモデル事業のプリペイドカードが使用できる店舗は、Visaクレジットカードの利用できる店舗となるが、通常、生活保護利用者が「クレジットカードが使える」を理由として店舗を選択することはない。

 さらに、元生活保護ケースワーカーの中山直和氏は、

「これから、2000世帯に参加希望させるように、大阪市のケースワーカーに強制圧力がかかるのではないでしょうか。現役のケースワーカーが懸念しています」

 と述べた。これに対し、大阪市役所職員は「強制はできません」と答えたということだが、人事評価などを通じた実質的強制の可能性まで皆無と考えてよいのだろうか?