「日本銀行の説明はよく分からない」。そう語る市場参加者は国内外において非常に多い。

市場が混惑する二つの理由 <br />日銀が陥ったワナと陰の標的3月20日で就任から丸2年を迎えた黒田東彦・日本銀行総裁。市場との対話を見直すべき時期に差し掛かっている
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 昨年10月に日銀は、原油価格の急落が国民のインフレ予想を低下させる恐れがあること、2015年の春闘にとって昨秋は大事な時期だったこと、以上2点の理由から「予防的措置」として追加緩和を決定した。

 現在の原油価格は10月時点より大幅に低い。しかし、黒田東彦総裁は「物価の基調に変化は見られない」としている。そして「2年程度を念頭にできるだけ早期にインフレ率を2%にする」と黒田総裁が宣言してからこの4月で2年が経過するが、現時点で追加緩和は必要ないとの判断を示している。

 今年の春闘での賃上げ率は昨年を上回るものになる。それは先行き緩やかに物価上昇要因として働くが、その前に、消費者物価指数(生鮮食品を除く)が前年比でこの春にマイナスになり得ることを日銀も認めている。

 これまで日銀関係者は、消費税引き上げによるインフレ率上昇であっても、「物価が上がるという経験」自体が人々のインフレ予想を押し上げると説明していた。だとすると、インフレ率がマイナスになったらそれが国民のインフレ予想を押し下げる恐れがありそうだが、それは重視されていない。

 日銀と市場のコミュニケーションは昨年もかなりぎくしゃくしていた。民間エコノミストを対象にした「フォーキャスト調査」によると、昨年1月時点で87%ものエコノミストが日銀は7月までに追加緩和を行うと予想していた。インフレ率を2年で2%にするには追加緩和が必要なことに加えて、2度目の消費税引き上げを政府が決断するには7~9月のGDPが重要だと考えられていたからだ。