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安東泰志の真・金融立国論

政府系金融機関は本当に必要か

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第56回】 2015年4月10日
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官の介入・肥大化は正当化できるのか。写真は政投銀の所管省庁である財務省
Photo:yayoicho-Fotolia.com

 政府は2月20日、日本政策投資銀行(政投銀)と商工組合中央金庫(商工中金)の根拠法の改正案を通常国会に提出した。2022年度までを目途としていた政投銀と商工中金の完全民営化の時期を先延ばしして、当面の間、政府が株式の一部を保有し続ける内容だ。また、官が主導するファンドも相変わらず跋扈(ばっこ)し続けている。

 しかし、本来は民間でできることにまで官が介入し、市場規律を歪めるのは資本主義国家としての信認を失うものであり、金融立国の障害となるものだ。以下、どうしてこのような議論が出てきたのか、その背景を探ると共に、なぜそれが問題なのかについて考えてみたい。

政府による企業支配を続ける
まやかしだらけの法案内容

 去る1月8日の自民党政務調査会の部会にて、「成長と安心のために必要な資金供給に関する当面の対応」なるペーパーが配布された。もちろん、それまでに財務省や経済産業省など関係各省は政府・与党との間で十分な根回しをしていたに違いないのだが、そのペーパーの内容については与党内でさえ、相当数の議員から異論が出るものだった。

 その理由は、提案されている内容が、政投銀と商工中金の完全民営化の先送りであるばかりでなく、むしろ、それら政府系金融機関の業務拡大を目指すものだったからだ。

 政投銀と商工中金の完全民営化を延期し、彼らに業務の拡大を許容する理由として挙げられていたのは、(1)成長マネーの供給、(2)セーフティネットマネーの供給、の2点だ。

 いわく、「企業の潜在的な成長力を引き出すには、資本性資金を中心とする成長マネーが不可欠だが、現状、民間の担い手・市場が未成熟」「金融危機や大規模な自然災害は、実体経済に大きなダメージ。危機に対する備えなしには、企業は思い切った成長への投資ができない」。

 そのため、政投銀には、危機対応業務の実施を義務付け、また、2013年に立ち上げた「競争力強化ファンド」について法律上の「特定投資業務」とし、2020年度末までの間、政投銀に対する政府の出資を可能とする。政投銀は2025年度末までに特定投資業務によるすべての投資資産を処分し、同業務を終了するよう努める。現在、政府が政投銀の株式の100%を保有しているが、特定投資業務の的確な実施を確保するため、2025年度末までは政府に2分の1超の株式を保有する義務を課し、その後も当分の間、政府が3分の1超の株式を保有するよう義務付ける。商工中金は政府が株式の約46%を保有しているが、当分の間必要な株式を保有する(下線筆者)というのだ。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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