飲料業界の勢力図を一変させることになる、JT自販機事業の争奪戦。サントリー、アサヒ、キリンといったビール系飲料メーカーが獲得への意欲を強めているほか、水面下では、意外なプレーヤーも名乗りを上げていることが分かった。久方ぶりの大型案件を前に業界は色めき立っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)

 4月17日──。飲料業界関係者にとって、運命の日が刻一刻と迫っていた。

 JTが売却を検討している自動販売機子会社、ジャパンビバレッジの応札期限が、17日だったのである。その日が近づくにつれ、業界内では、「キリンは幾らカネを積むのか」「サントリーがなりふり構わぬ買収工作をしているというのは本当か」などと、さまざまな情報が錯綜していた。

 本稿執筆時点で有力視されているのは、サントリーホールディングス、アサヒグループホールディングス、キリンホールディングスのビール系3社。ビール市場で熾烈な争いを繰り広げる大手3社が、ジャパンビバレッジをめぐって熱く火花を散らす。

 業界4位で、26万台の自販機を保有するジャパンビバレッジは、かねて飲料業界再編の中核と目されてきた。上記3社のうちどこが獲得したとしても、確実に業界の勢力図は塗り替えられることになる。まさしく、飲料メーカーにとって、今回の争奪戦は“天下分け目の戦”なのである。

自販機26万台をめぐり、飲料メーカーだけでなく異業種も争奪戦に参加する。買収金額は1000億円までつり上がるとの予測もある Photo by Fusako Asashima

 具体的に見ていこう。業界2位のサントリーが買収に成功したならば、業界首位の日本コカ・コーラの背中がぐっと近づく。日本コカの自販機台数83万台に対して、サントリーのそれは49万台。ジャパンビバレッジを獲得できれば、自販機台数は合計75万台と拮抗する。その上、「コンビニエンスストアなど個社ベースでは、日本コカの販売数量を上回っているチェーンもある」(飲料業界関係者)。

「国内飲料市場における首位奪取のために」(サントリー関係者)、ジャパンビバレッジは喉から手が出るほど欲しいのだ。