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「音」「色」「動き」の新商標で
企業の手間とコストが急増する?(下)

――福井健策弁護士に「商標法改正」のポイントを聞く

ダイヤモンド・オンライン編集部
2015年5月8日
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>>(上)より続く

――新しくつくった商品やCMの「音」「色」「動き」などが偶然他社のものと似ていて指摘された場合、どうなるのでしょうか。「知らなかった」と相手に謝罪し、つくり直せば済むのでしょうか。

 著作権の観点から言えば、偶然の一致であれば許されます。「知らなかった」というのが嘘であればもちろんダメですが、知らずに似てしまった場合は原則として適法なのです。ところが、商標の場合はそうはいかない。もともと役所に登録されているものであり、事前に調べて似ないようにすることが可能なわけだから、「偶然似てしまった」という言い訳は通用しません。だから企業は、冒険を避けたいならば、事前に「音」「色」「動き」などの一致をきちんと調べなくてはいけません。

単純な商標行為を有限で守る商標権
意外と知らない著作権との「違い」

ふくい・けんさく
弁護士・ニューヨーク州弁護士。骨董通り法律事務所For the Arts代表パートナー、日本大学芸術学部客員教授。1991年東京大学法学部卒業、98年米国コロンビア大学法学修士課程修了。芸術文化法、著作権法を専門とし、thinkC(著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム)世話人、国会図書館審議会など多数の審議会・委員会・団体の委員・理事も務める。著書に『18歳の著作権入門』(ちくま新書)、『著作権の世紀 ─変わる「情報の独占制度」』(集英社新書)、『「ネットの自由」vs.著作権 ─TPPは、終わりの始まりなのか』(光文社新書)など。

――今、著作権の話が出ましたが、そもそも著作権と商標権の違いは何ですか。

 著作権は文章、音楽、画像、映像などについて創作者に与えられる独占権で、とても強い権利です。登録は不要で、全世界で守られます。一方商標権は、著作物には至らないような単純なフレーズ、マーク、音の並び、色彩の組み合わせなどについても認められる権利で、こちらは国ごとに登録する必要があります。登録して権利が守られる期間は10年と短いものの、更新が可能であり、更新を繰り返すと永久に守られます。

 ただ商標権は、ありとあらゆる利用を止められるのではなく、ブランドネーム、音、色彩などを商標として使う行為についてしか効力が及ばない。たとえば、テレビ番組、小説、漫画の中に具体的な企業名や商品名が出て来ても、それはもともと商標として使っていないので、商標権を侵害しているとは見なされません。また、フレーズでも音でも色彩でも、誰が見聞きしても特定の企業や商品をイメージできるくらいの識別性がないと、出願しても登録は認められません。著作権はより強く、こうしたこと全てに効力が及びます。その代わり、短い言葉、音の並び、単純な色彩などは範疇外となります。

 乱暴に言えば、垣根を高くしてより強い権利を与えるのが著作権、垣根を低くしてお金さえ払えば登録できる状態にし、幅の狭い権利を与えるのが商標権という違いがあるのです。

――なるほど。「音」「色」「動き」などが作品の構成要素に大きく関わって来るテレビ局の番組制作の現場などは、今回の改正でさぞかし苦労しているのではないかと思いましたが、ちゃんと線引きがあるのですね。

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