「なぜ日が出る前の夜中に働かなくてはならないんだ。そんな思いまでして農業をするなんて……」

 こう言う人も多くいました。農業の指導機関が農家にサラリーマン並みの労働時間を指導していた時代だったこともあり、そのような話がよく耳に入りました。今では笑い話ですが、当時この近辺では、

「昭和村に嫁はやるな。働きすぎて殺される。嫁にもらうなら昭和村の娘をもらえ、働き者で楽になる」

 という皮肉な噂もあったくらいです(今ではそのような噂はありません)。

 そして、時がたつにつれて朝取りレタスの技術も整い、機械化も進んできました。早朝に収穫作業に来る人の労働体系も整って、安定した農業が確立できたのです。そのような先人の努力もあって、今では耕作放棄地はほぼゼロの状態で農業後継者も多く、既婚率も高く、農業所得で立派に生活が成り立つ農業の盛んな村になったのです。

 私はときどき「もしその時代にヤマダイ物産の当時の社長が朝取りレタスをやらなかったら、また、周りの農家の人たちが指導機関の言うように午前8時~午後5時の労働時間に縛られて取り組まなかったら、私たちの地域は農業が盛んにならなかっただけでなく、私たちの会社も存在しなかったのではないか」と思うことがあり、先人たちの努力に感謝せずにいられません。

 時間に縛られた働き方をしていては、本当によい農産物やお客様を満足させるサービスを提供することはできません。とくに農産物は生き物なので、24時間そこに意識を向けることが独立して自分で経営する上でも、農業法人の社員として農業に関わる上でも、とても大切です。

 そしてこれと同じことは、実は農業生産だけでなく、加工や販売に関わる場合でも言えるのです。