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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

海外で日本人社員を“使い捨て”するグローバル証券の罠(上)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第14回】 2015年5月12日
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 今回は、グローバル化の最前線である日系大手証券会社のシンガポール支店で働いていた41歳の男性(A氏)を取り上げたい。男性は昨年暮れにこの証券会社を退職し、帰国した。現在は、大手金融機関のグループ会社に勤めている。

 以前の会社のシンガポール支店にいた頃、正社員はいくつかのグループに分けられ、自らの扱いは「限定正社員だった」と振り返る。限定正社員とは、労働内容や地域が限定された正社員のことで、非正規社員と正社員の中間的存在と言える。A氏はその待遇などに不満を感じて辞めたそうだ。

 限定正社員は、非正規雇用の増大に歯止めをかける目的で、政府の成長戦略でも導入が検討されてきた。一方で、解雇されやすいといった労働条件面でのデメリットも指摘され、世間ではその是非が議論されている。

 これまで日本型正社員が中心だったビジネスパーソンの働き方が多様化するなか、彼のように不満を持つ社員は、今後日本国内でも多く見かけるものと予測できる。しかし筆者に言わせれば、こうした議論には的を射ていない部分も少なからずあるように思う。日本企業の海外支店の内情をえぐることで、「働き方」に関する議論の盲点を炙り出したい。


限定正社員は安かろう、悪かろう
だから、辞めさせればいいんだ

グローバル企業の海外支店で働くことは、日本人にとってキャリアアップにつながる反面、ケースによっては人事制度上の思わぬ「落とし穴」もあるようだ MIXA-Fotolia.com

A氏 シンガポール支店は、日本企業の今後の人事のあり方を先取りしている感じでした。150人ほどの正社員をその職種や仕事の内容などによって、いくつかのグループに分け、総額人件費などの管理をしていました。今風に言えば「多様化する正社員」であり、私などはその1つとして「限定正社員」だったのだと思います。

 だけど実際のところ、「限定正社員などを安かろう、悪かろう、だから、辞めさせればいいんだ」としか見ていないのが、不満でしたが……。

 シンガポールは東南アジアの金融センターです。日本からは主だった証券会社や銀行などが進出していましたが、支店での人事のあり方は、どこの会社も同じようなものだったと思います。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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