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ニッポン 食の遺餐探訪

実は凄かった!木の食品包装「経木」の天然パワー

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第30回】 2015年5月13日
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経木。今ではプラスチックトレイに変わられたが、昔は経木で食品を包むのが当たり前だった

 昔は良かった、と言う人があまり好きではない。とくに食べ物(と教育)に関しては、こうした意見を述べる人が多いので困ってしまう。少なくても食に関しては「昔は良かった」とばかりも言い切れない。

 戦後から1970年代くらいまでの日本の食は非常に低い水準にあったし、添加物や化学調味料、模造品などの問題もあった。昔は良かった、という人はそのような都合の悪いことをみんな忘れてしまっているだけである。

 大人は「今のほうがいい」と言ったほうがいいし、言える社会にする責任がある。そうじゃなければ、希望なんて誰も持てないように感じる。

 と、言っておきながらそんな僕でも「昔のほうが良かったのではないか?」と思うことがある。それは食品の包装だ。

 今、スーパーに行けば肉や鮮魚はプラスチックのトレイで売られているけれど、『プラゴミ』の日になるとそのトレイが山のように出て、げんなりする。

 昔、食品を包むのに使われていたのは経木である。経木とは木を紙のように薄くした和風のキッチンペーパーのようなものである。すべて燃えるゴミで捨てることができ(もちろん回収したプラスチックゴミも多くが燃料として使われはするが)、土に還る包装材だ。

 「昔は外で買い物をすれば肉や魚もこれに包んでくれたものよ」

 と年配の方は言うが、見る機会は減り、いつのまにか台所からも姿を消した。

殺菌成分で味と鮮度を保つ
和食に欠かせない「経木」のパワー

まったくの手作業。日本人のDNAに訴えかけてくる白木の美しさ

 たまの外食でカウンターの居酒屋や日本料理店に行く。冷蔵庫からラップに包まれた刺身用の柵をとりだされると「うーん」と思う。冷やしすぎている刺身が美味しくないのはもちろんだけど、ラップはいかにも味気がない。

 昔の仕事では魚や肉を冷蔵保存する時は経木で挟むものだった。やっている人も減ったようだが、それに習って試してみると案外と具合がいい。

 ちゃんとした理由もある。鮮度の良すぎる魚や肉は味が乗ってこないので、冷蔵庫などで寝かせる必要があるけれど、鮮度が落ちてしまっては元も子もないのだ。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


ニッポン 食の遺餐探訪

和食を世界遺産に、という動きが農林水産省を中心にはじまっている。日本料理はここ十年余りの世界的な流行になり、外国の料理人の多くも関心を持っていて、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を理解できていないのではないか。そこでこの連載では、日本の食を支えている道具や食材をつくっている生産者、職人を訪れて、私たち日本人が知らない日本の“食の遺餐”を紹介していく。 

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