毎年6月になると「日本再興戦略」が更新され、安倍政権の成長戦略が描き直される。期待する部分もあるが、成長戦略と聞いて当初抱いていた期待感の大きさと比べると、かなり色褪せてしまった感は否めない。
そこで、改革を加速する突破口と位置づけられてきた「国家戦略特区」の運用状況について、振り返っておくことにしたい。
まず、国家戦略特区の意義については、今すぐに全国展開が難しい規制緩和であっても、指定された地域で野心的に規制緩和を行って、それを全国展開する突破口にしようと説明されていた。事実、関係者たちは、国家戦略特区とそれまでの特区との違いは何かと問われて、地域色を前面に押し出した従来型特区とは一線を画すると発言していた。
手続きとしては、2014年5月に東京圏、関西圏など6地域を区域指定した後、具体的な区域計画を順次決定している。たとえば、東京圏における計画の内容に、都市再生特別措置法の特例、保険外併用診療の特例、病床規制の特例などがある。
ただし、そうした特例に沿って事業者が計画を実行した場合、事業が進んでから成果が見えるまでには相当の時間がかかる。事例によっては、その成果を広い範囲の国民が実感しにくいものもある。国家戦略特区の中身が、即効性を実感しにくいプランで構成されていたことが、実感の伝わりにくい理由と考えられる。
規制緩和にある不確実性
そもそも成長戦略という言葉には、多分に希望的観測が隠れていて、過大評価されやすかった。政府が旗を振れば、単純明快に経済成長率を押し上げられるような妙薬は存在しなかったのだろう。
むしろ成長戦略とは、成功するか失敗するかがわからない規制緩和の束(パッケージ)である。だからこそ、実行してみなければ成果を確認することができなかった。成功は確率的にしか生まれないと、理解すべきだった。