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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

色褪せてきた成長戦略・国家戦略特区を問う

――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第171回】 2015年5月13日
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改革を加速する突破口である「国家戦略特区」の運用状況は、どうなっているのか Photo:yayoicho-Fotolia.com

 毎年6月になると「日本再興戦略」が更新され、安倍政権の成長戦略が描き直される。期待する部分もあるが、成長戦略と聞いて当初抱いていた期待感の大きさと比べると、かなり色褪せてしまった感は否めない。

 そこで、改革を加速する突破口と位置づけられてきた「国家戦略特区」の運用状況について、振り返っておくことにしたい。

 まず、国家戦略特区の意義については、今すぐに全国展開が難しい規制緩和であっても、指定された地域で野心的に規制緩和を行って、それを全国展開する突破口にしようと説明されていた。事実、関係者たちは、国家戦略特区とそれまでの特区との違いは何かと問われて、地域色を前面に押し出した従来型特区とは一線を画すると発言していた。

 手続きとしては、2014年5月に東京圏、関西圏など6地域を区域指定した後、具体的な区域計画を順次決定している。たとえば、東京圏における計画の内容に、都市再生特別措置法の特例、保険外併用診療の特例、病床規制の特例などがある。

 ただし、そうした特例に沿って事業者が計画を実行した場合、事業が進んでから成果が見えるまでには相当の時間がかかる。事例によっては、その成果を広い範囲の国民が実感しにくいものもある。国家戦略特区の中身が、即効性を実感しにくいプランで構成されていたことが、実感の伝わりにくい理由と考えられる。

規制緩和にある不確実性

 そもそも成長戦略という言葉には、多分に希望的観測が隠れていて、過大評価されやすかった。政府が旗を振れば、単純明快に経済成長率を押し上げられるような妙薬は存在しなかったのだろう。

 むしろ成長戦略とは、成功するか失敗するかがわからない規制緩和の束(パッケージ)である。だからこそ、実行してみなければ成果を確認することができなかった。成功は確率的にしか生まれないと、理解すべきだった。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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