経営×ソーシャル
おもてなしで飯が食えるか?
【最終回】 2015年5月27日
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山口英彦 [グロービス マネジング・ディレクター、ファカルティ本部長]

「おもてなし」はビジネスとして生き残れるのか?

 今回は「おもてなしの未来」について語ってみます。

 おもてなしをビジネスとして成立させるには幾つものハードルがあり、マスコミが騒ぎたてるような成長市場には簡単になり得ない点を、繰り返し指摘してきました。しかし、おもてなしの未来が絶望的かと言えば、必ずしもそうでもありません。本コラムでも紹介した知恵を用いたりすることで、以下の図にあるような4つのパターンで、おもてなしがビジネスの中で活かされていくと予想します。

 おもてなしをビジネスとして成立させる上でのハードルはいくつかありますが、特に顕著なのは、

(1)1つひとつのサービスに時間やコストがかかり、収益性が落ちる
(2)一部の従業員の技量に依存してしまい、事業拡大が妨げられる

 の2つです。上記のマトリクスの2軸もこの2つに対応しており、

縦軸: 収益化の方向性(サービス価格に転嫁して回収するか/しないか?)
横軸: 規模化の方向性(個人技依存を続けるか/脱却を図るか?)

 と設定しています。収益化と規模化、この2つの障壁にどう対処するか次第で、今後のおもてなし活用のカタチが変わってくるのです。

おもてなしで集客する ―代官山蔦屋書店

 まず左上の「マーケティング手段としての利用」から見てみましょう。「マーケティング」と言うと意味が広いのですが、要は集客や顧客との関係強化の手段としておもてなしを活用するパターンです。

 一例として、代官山の蔦屋書店があります。こちらの書店はCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が「大人のための文化の牙城」を目指して、2011年冬に開業した書店です。足を運んだことがある方も多いと思いますが、建築デザインは秀逸ですし、インテリアも洒落た自宅で寛ぐような居心地のよさがあります。何よりもユニークなのは、コンシェルジュと呼ばれるプロがアート・旅行・料理といったジャンル毎にいて、各コーナーの棚づくりを任されているだけでなく、専門知識を活かして顧客が本を選ぶ相談に乗ってくれる点です。このようにおもてなしに溢れた店舗ですので、顧客としては嬉しい一方、「こんな手間のかかるサービスを提供して、CCCはちゃんと儲かるんだろうか?」と心配になるかもしれません。実際、書籍は集客力のある商材で来店客は絶えないものの、書籍販売は利幅が薄いですし、本を買い求める人で蔦屋書店のレジが混んでいる様子もありません。

山口英彦[グロービス マネジング・ディレクター、ファカルティ本部長]

東京大学経済学部卒業、ロンドン・ビジネススクール経営学修士(MBA、Dean's List表彰)。 東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)、ボストンコンサルティンググループ等を経て、グロービスへ。現在は同社の経営メンバー(マネジング・ディレクター/ファカルティ本部長)を務めながら、サービス、流通、ヘルスケア、エネルギー、メディア、消費財といった業界の大手企業クライアントに対し、戦略立案や営業・マーケティング強化、新規事業開発などの支援・指導をしている。また豊富なコンサルティング経験をもとに、経営戦略分野(新規事業開発、サービス経営、BtoB戦略など)の実務的研究に従事。米国のStrategic Management Society(戦略経営学会)のメンバー。 主著に『法人営業 利益の法則』(ダイヤモンド社)、『サービスを制するものはビジネスを制する』(東洋経済新報社)、『日本の営業2011』(共著、ダイヤモンド社)、『MITスローン・スクール 戦略論』(共訳、東洋経済新報社)。


おもてなしで飯が食えるか?

オリンピック招致の最終プレゼンを契機に、各所で注視されている「おもてなし」。日本人の細やかな心づかいを製品、サービスに反映させて収益向上につなげようと考える企業は多いと思うが、そこに落とし穴はないか?グロービス経営大学院の山口英彦が近著『サービスを制するものはビジネスを制する』のコンセプト等も反映させながら問いかける。

「おもてなしで飯が食えるか?」

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