十萬屋
東武百貨店池袋店9階呉服売り場にオープンした着物の格安ショップ「十萬屋」

 着物は高い―。

 そんなイメージで着物を敬遠している女性も少なくないのではないだろうか。

 東武百貨店が着物の仕立てと帯のセットで10万5000円均一という着物の格安ショップ「十萬屋」をオープンさせた。池袋店の9階呉服売り場にオープンし、着物と帯をそれぞれ100点ずつ用意している。

 訪問着や小紋、紬を取り揃え、振袖や黒留袖といったフォーマルなものは置かない。普段に気軽に使える着物を格安で提供することで、50~60代が中心だった着物の客層を30~40代にまで広げようとするもの。

 呉服の小売り市場は、1990年前後のバブル期には2兆円あったと言われているが、矢野経済研究所の予測では2008年は約3900億円である。

 「季刊きもの」(繊研新聞社)によるアンケートでは、回答者82人(女性76人、男性6人)のうち、着物と帯をコーディネートしたときの買いやすい価格帯として、10万円台までという回答が76人と全体の9割を占めた。

 いざ着物を買おうとすると、表地に10万円という値札がついていたのに、裏地と合わせて仕立てをすれば支払い時には15万~16万円になってしまう。ちなみに、東武百貨店の呉服売り場における購入客の平均的な予算は、着物と帯がそれぞれ18万~28万円、合わせて40万~50万円という。

 「高い」、さらには「最終的な値段が分かりづらい」というのが女性が着物を敬遠する要因になっている。これがセットで10万5000円均一となれば、予算オーバーの心配がなくなる。

 低価格の秘訣は、リサイクル着物ショップ「たんす屋」を展開する東京山喜とのコラボレーションだ。東京山喜が持つ全国の産地問屋とのネットワークを生かして反物を安く仕入れ、ベトナム工場で縫製する。注文から仕上がりまで40日ほどである。

 売り場には、着物の基本的な知識相談に応じる相談員を1人置くのみ。基本的にお客自身が自分の好みの反物と帯を選ぶセルフ方式だ。

 たんす屋を10年間営業してきた東京山喜の白井一夫常務は、「リサイクルに回ってくる着物の多くは、着物全盛期の昭和30~40年代のもの。当時の女性は身長が低く、今の女性にサイズが合わない」ことがリサイクル着物の弱点だという。新たに仕立てる着物であれば、お客の身丈に合った商品を提供できる。

 商品価格帯の高い百貨店は、この不況の波をもろに被り、売上高が厳しい状況が続いている。東武百貨店は婦人服の分野で、オリジナルの低価格帯商品を投入しているが、10万5000円均一の着物はこれに続くものだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)