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岸博幸の政策ウォッチ

支持団体の意のままに動く自民党議員の危うさ

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第9回】 2015年5月29日
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自民党内の政策議論の
レベルが低下している

なぜ自民党の国会議員の政策議論のレベルが低下してしまったのか

 今国会冒頭での所信表明演説で、安倍首相は“今国会を改革断行国会にする”旨を述べていましたが、現実は完全な掛け声倒れになっています。

 例えば、目玉の農協改革はそれ自体評価できますが、農業改革でもっとも重要な企業の農地保有については何も動きがありません。また、経済全体の生産性向上に不可欠な雇用制度改革については、同一労働同一賃金や解雇規制の緩和といった最重要テーマは検討さえ行なわれず、ホワイトカラーエグゼンプションが実現される程度。しかも、その法案さえ、今国会中に成立させられるか微妙な状況です。

 このように、今や国会は改革断行国会どころか集団的自衛権国会になってしまい、6月末に発表される予定の成長戦略も今まで以上に中身のないものとなりそうです。

 しかし、改革推進のモメンタムの低下以上に危惧すべきは、与党である自民党内での政策議論のレベルの低下です。

 政治家らしい大所高所からの戦略的な視点が欠如しているのみならず、もっともらしい理屈を自分なりに構築することもなく、支持者の業界団体から陳情された内容をそのまま主張しているように見えます。もしかしたら、自民党の国会議員の質がかなり低下しているのではないでしょうか。

酒の安売り規制をめぐり
欠けている真っ当な政策議論

 その典型例が、酒の安売り規制の導入でしょう。既に報道されているように、自民党は議員立法で酒税法などを改正し、主にビール系飲料の過度の安売りを規制しようとしています。国が“公正な取引の基準”を定め、販売業者がそれに従わない場合は販売免許の取り消しもあるという強い規制です。

 この規制強化が議員立法という形で陽の目を見た理由は簡単で、大手スーパーなどの安売りとの競争に晒されて苦境が続く町の酒屋さんの集まりである全国小売酒販組合中央会の陳情/根回しがあったからです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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小泉政権時代に竹中平蔵氏の秘書官を務め、数々の構造改革を立案・実行した岸博幸氏がテレビや新聞が決して報じない知られざる政治の裏側を暴きます。

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