社会保険労務士、税理士・公認会計士、司法書士、弁護士などの「士業」は、資格者増や競争激化などにより業界内の二極化が進んでいる。厳しい経営環境の中で「選ばれ続ける事務所」になるためには何が必要か。士業の経営指導で抜群の成功率を誇る船井総合研究所の経営コンサルタントが、業界の現状と差別化のポイントを語る。連載の第2回は、会計事務所の経営コンサルタント・宮井亜紗子氏に話を聞いた。

厳しい環境の中で
伸びている事務所の特徴とは?

――会計事務所(税理士事務所と公認会計士事務所の総称)の現在の経営環境について教えてください。

税理士・会計士の業績アップは<br />「3つの差別化」が決め手!宮井亜紗子(みやい・あさこ)株式会社船井総合研究所 会計事務所コンサルティングチーム チーフ経営コンサルタント。慶應義塾大学環境情報学部卒。2008年船井総研に入社、2010年より会計事務所のコンサルティングに特化し、特にBtoBのウェブマーケティングを得意とする。現在は、会計事務所の新規法人顧問獲得を中心に全国でコンサルティングを展開中。年間新規売上1億円超の営業体制構築などの実績を持つ。近著に『士業の業績革新マニュアル』(船井総合研究所 士業コンサルティンググループ著)がある。

税理士、公認会計士の資格者数は増えていますが、2010年をピークに資格試験の受験者数は減り続けています。以前ほどの人気資格ではなくなってきたと言えそうですね。

その背景には、メインのお客様である中小企業が減っており、競争が激しくなっていることが挙げられます。また、会計事務所の仕事は顧問契約がベースとなっていますが、ここ数年、顧問契約の解除や顧問料単価の減少が多くの事務所を悩ませています。ひと昔前のように「開業すればお客様を獲得できる」状況ではなくなっているのです。実際、いったんは開業したもののうまくいかず、会計事務所の一所員として勤め直すというケースもあります。

もっとも、こうした厳しい環境でも大きく業績を伸ばしている事務所はあります。それが、新しい商品を積極的に開発しているところ、ウェブマーケティングを積極的に行っているところです。例えば、若くてウェブマーケティングが得意な先生が、新規案件を年間100件以上も受注したりしています。こうした事務所はかなり大型化していて、既存顧客からの紹介に頼った事務所と大きく差が開いています。

――商品とマーケティングについてのお話が出ましたが、会計事務所の差別化でとくに重要なものをいくつか挙げていただけますか。

そうですね。長期的に見れば「立地」「ブランド」「規模」が大切ですけど、短期的な業績アップで言うと「商品力」「価格力」「販促力」ですね。なかでも真っ先に取り組むべきは、新商品の開発だと思います。顕在化しているニーズを商品化できると、ほとんどのケースで売上は上がるからです。