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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

人を散々利用して陰では悪口三昧
同僚の心を腐らせる「言うだけ番長」社員

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第18回】 2015年6月9日
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 今回は、不動産会社から大手IT系ベンチャー企業に転職した男性を紹介しよう。

 そのベンチャー企業はここ十数年来メディアでよく話題となる会社であり、就職では学生から根強い人気がある。

 男性は、新卒時にはこの会社の内定を得ることができなかった。不動産会社で7年間耐え抜いて、中途採用試験にパスした。不動産会社に在籍した「苦節7年」間のみならず、転職後も周囲をイラッとさせる言動をとり続け、「言うだけ番長」というニックネームもつけられた。

 今回は、この男性と元同僚たちの姿を描くことを通じて、サラリーマンの心を腐らせる「仲間意識」「和を重んじる」という人間関係の罠について分析したい。


「今さら何を迷っているんだ?」
転職の相談で同僚をイラッとさせる男

サラリーマンの「仲間意識」は重要だが、それは時として社員同士の心を腐らせかねない。ある不動産会社で周囲をイラッとさせ続けた、「言うだけ番長」社員の素顔とは?

 ここは、中堅の不動産会社(社員数400人)の営業部のフロア。

 「大隈さん、ちょっといいですか……」

 広報部の福元(29歳・仮名)が大隈の机にそばに来て、前かがみになり、声をかける。大隈(36歳・仮名)が即答しないと、頭を軽く下げる。

 福元は今、辞表を出すか否か迷っている。数週間前に受けた大手IT系の会社(社員数1000人規模)の中途採用試験で内定を得たらしい。知名度の高いベンチャー企業で、新卒の頃から入社したかった会社だ。

 勤務時間中であり、周囲には上司や同僚がいる。大隈がわざとらしくため息を軽くつく。そして15メートルほど離れた階段の踊り場に向かう。その後を、福元がついていく。

 誰もいないことを確認し、大隈が話す。

 「今さら、何を迷っているんだ!」

 福元は、そっけない態度に拍子抜けしたようだ。

 「本当にいいんでしょうか。辞めて……」

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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