2014年9月、千葉県銚子市の県営住宅で、一人のシングルマザーが中学生の娘を殺害した。貧困状態にあった母親は、2年にわたって家賃を滞納しており、強制退去の対象となっていた。生活保護の相談に福祉事務所を訪れたこともあったが、利用には至っていなかった。
今回は、事件と判決に対する漫画家・さいきまこ氏の思いを紹介する。2015年6月12日、第一審で「懲役7年」の判決が言い渡された直後の今、改めて事件の実像を捉え直してみたい。
「懲役7年」は重すぎる? 軽すぎる?
漫画家・さいきまこ氏の複雑な思い
2014年9月、千葉県銚子市で、シングルマザーが中学生の娘とともに無理心中を試みた。母親は、娘を殺した後、自身も自殺する心づもりであった。しかし、自殺を実行する前に逮捕された。
この母親に対し、2015年6月12日、千葉地裁は「懲役7年」の裁判員裁判判決を言い渡した。求刑の「懲役14年」が半分にまで軽減されるのは、殺人では異例に近い。
事件当時43歳だった母親は、中学2年だった13歳の娘とともに、県営住宅に居住していた。しかし、2年にわたって家賃を滞納したため、明け渡しの強制執行が行われることとなった。
強制執行の日に、事件は起こった。千葉地裁支部の執行官らが室内に入ったとき、母親は、娘が体育祭で活躍している映像を見ながら、息絶えた娘の頭を撫でていたという(朝日新聞報道による)。
母親はパート勤務だったが、毎月の就労収入は4~8万円程度。多重債務・国民健康保険料滞納などの困窮状態にあった。母親に、相談できる友人知人はおらず、生活保護を申請しようと考えたものの申請には至っていなかった。公的扶助論を専門とする吉永純・花園大教授(公的扶助論)は、行政側の問題を指摘した上で、
「困窮者は貧困から抜け出すために必要な情報を得る手立てを持てない。だからこそ行政側が積極的な情報提供やアドバイスをする必要がある」
と、アウトリーチの必要性を指摘している(毎日新聞報道による)。
レディース・コミックを主な活動の場として、貧困問題、特に子どもの貧困をテーマとする作品を発表している漫画家・さいきまこ氏は、昨年9月、事件が報道されはじめた直後から、「他人ごとではない」と強い関心を抱き続けていた。さいき氏は、現在20代の息子さんを育ててきたシングルマザーでもあるからだ。まず、判決に対する思いはどうだろうか?