6月10日、衆議院財務金融委員会で日本銀行の黒田東彦総裁が発した為替に関する言葉は、市場関係者の度肝を抜いた
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 黒田東彦・日本銀行総裁が6月10日の衆議院財務金融委員会で発した言葉で、ドル円レートは瞬時に円高方向へ吹き飛んだ。通信社が報じるヘッドラインを集めて、アルゴリズムでトレードするシステムが動きを加速させたともいわれている。

 多くの市場関係者が黒田総裁のその発言を明確な円安けん制と受け止めた。しかし、民主党の前原誠司議員との質疑応答の中で飛び出した言葉は、6月16日の国会で黒田総裁が釈明したように、円安けん制を意図したものではなく、ハプニングだったといえる。ビデオを見ればそれが明確に分かる。

 前原議員は、黒田総裁が安倍晋三首相との会談後に「為替レートはファンダメンタルズを反映し、安定的に推移することが望ましい」と言ったことの趣旨を尋ねた。黒田総裁は、為替政策は財務省に権限と責任があり、その発言はG7のコンセンサスを述べただけだとかわした。

 続いて前原議員は、「今の為替相場はファンダメンタルズを反映しているのか」と聞いた。黒田総裁は、「ファンダメンタルズを反映している、していないとお答えするのは差し控えたい」と断った上で、「現在の水準はリーマンショック前にある意味戻った。ただ、それが絶対的に正しい水準であるという根拠が別にあるわけではない」と答えた。