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MERS騒動に揺れる韓国の「イラ立ち」が対日外交に向かうとき

木村幹・神戸大学教授

木村幹[神戸大学教授]
2015年6月30日
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終わらぬMERS騒動に揺れる韓国で
感染拡大よりも深刻なこと

ソウル市内の病院でMERSへの対応に抗議する医療従事者 Photo:AP/AFLO

 韓国がMERS騒動で揺れている。最初に患者の発症が確認された5月20日以降、わずか1ヵ月あまりの間に患者数は150名を突破、この病気により死亡した人の数も20名を超える事態となっている。

 とはいえ、それだけなら、この問題は実はそれほど深刻ではない。現在の韓国は人口5000万人を超えており、その中において150名という患者数は、それ自身、さほど大きなものとは言えないからだ。韓国においてこの問題が重要なのは、それが単なる保健衛生上のもの以上の問題を引き起こしているからである。

 韓国政府は、感染者との接触や発熱など、MERSの疑いのある人々に対して自宅隔離を命じており、その数はすでに6000人を超えている。実際には発症者が確認されているのは特定の地域に集中しているから、この数は決して少ないものではない。当然のことながら、自宅隔離された人はその間社会的活動が不可能になるから、これを大きく恐れることになる。

 そもそも、この病気が拡大したのも病院においてであり、「怖くて、熱が出ても病院に行けない」という声が挙がるのも当然の状況になっている。怖くて病院に行けず、だから症状の発見が遅れて、ますます病気が拡大するという悪循環に陥りつつある。

 だが、これでもまだ問題がMERSだけならば、とにかく力づくででも感染の拡大を抑え、収束させてしまえば問題は解決する。だが、より深刻なのは、この過程において、人々の政府への不信感が深まりつつあることである。

 直接的な原因は、政府が病気の感染地となった病院の名前を公表しなかったことだった。政府は、地域の基幹病院であったこの病院に対する風評被害が広まり、地域がパニックになることを恐れたと言われている。

 しかしながら、一般の韓国人は政府に対してその公開を強く求めることとなった。何故なら、彼らには先に述べたように、感染と隔離を恐れて病院にさえ行き辛い状況が存在したからである。結局、この問題は病院の所在地であったソウル市がその名前を公表して、幕を下ろすこととなった。

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