20日に、政府税制調査会が2008年度税制改正に向けた答申をまとめた。今回の答申では、社会保障の財源確保のために消費税率引き上げが必要だという内容だ。「日本経済新聞」は「消費税、社会保障財源に」という見出しで21日朝刊の一面トップに報じている。政府税調が消費税増税に触れたのは、実に3年ぶりだという。

 福田内閣スタート直後から、消費税引き上げを目論む動きはあった。今回の答申は、2009年度の基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げるに際して、消費税率を引き上げてこの財源としたいという財務省の大方針に沿ったものなのだろう。ただし、今回は、時期と税率には触れていない。具体的な数字やスケジュールを挙げると議論がヒートアップしてしまう可能性があるためだろう。

 ところで、税制調査会は審議会の一つだが、審議会というものは事務局に相当コントロールされてしまう。審議会を有識者を集めた客観的な議論の場であると位置づけるためには、事務局から利害関係者を外すべきだ。具体的に言うと、官庁を事務局にしてはいけない。審議委員として召集される人は、審議の前に事務局から「ご説明」を受け、その段階でおおかたの実質的な根回しが済んでしまう。審議委員のメンバーも、たとえば税の問題であれば財務省の意向が強く反映された人選になる。各種の審議会を客観中立的で国民の利益をバランスよく代表した専門家の意見であるとは誰も見ていないだろうが、シンクタンクと大学が持ち回りで事務局を行なうなどの抜本的な改革が、今後は必要だと思う。

消費増税=年金財源の
“意図的な短絡”

 さて、問題を消費税に戻すが、税率引き上げの議論の前にはっきりさせておきたいポイントが3つある。

 一つは、「年金と消費税は別である」ということだ。年金のための財源として、消費税を“紐付け”で持ってくるのは、話として筋が通らない。その前に、年金の給付額と負担水準はどの程度が適当で、それが維持可能なシステムなのかといったことを考えるべきで、その次に、税を財源とすべきか保険料で賄うべきかを論じて、さらに税金を財源にする場合に、どの税金で負担するのかという議論をするのが正しい手順だろう。