ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
実例で知る! 他人事ではない「男の離婚」 露木幸彦

「夫と一緒は嫌!」熟年離婚のお墓問題(下)

露木幸彦 [露木行政書士事務所代表]
【第8回】 2015年7月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

>>(上)より続く

銭ゲバの夫には「離婚」も
「儲け話」の一つ!?

 「前々から勘付いていたと思うけれど…母さんは父さんと別れたがっているよ。今回ばかりは決心が固いので、僕の方で母さんを翻意させるのは難しそう。そういえばこの前、母さんは『お父さんが離婚してくれれば年金以外は何もいらない』と言っていたよ。

 ちょっと計算してみたんだけれど、父さんは今まで月に7万円、母さんに渡していたよね。もちろん、離婚すれば渡さなくてもいいし、その代わりに年金を4万円、渡してくれればいいから、これからは3万円も浮くんだよ。結構、いい話なんじゃないかな?」

 もちろん、勇さんもいきなりの「妻からの三下り半」に相当驚いた様子で動揺しており、2人の間には15分ほど沈黙の時間が流れたそうです。シーンとした食堂で、勇さんは目の前に散らかった通帳をぺらぺらとめくったり、証書の表裏をくるくると返したり、投資信託のパンフレットを三角形に折ってみたりして落ち着かない様子でした。

 その日は、とりあえず勇さんが「まぁ、考えておく」と言い、圭介さんは施設を後にしたのですが、勇さんはまんざらでもない様子だったそうです。

 結局のところ、勇さんの思考回路は非常に単純明快で、複数の選択肢を用意されたら「金銭的に得な方を選ぶ」ようにできているのです。資産運用であろうと、家庭生活であろうと、離婚沙汰であろうと。どうやら勇さんの目には「妻との離婚」は、ある種の儲け話、そして圭介さんは儲け話を持ってきた業者の人間に映ったのかもしれません。そもそも勇さんには、しばらく経てば「自分が死ぬ」という発想が抜け落ちていたように思えます。だから、毎月3万円という金額が「長い目で見れば」自分にとって大きな得だと勘違いしたのでしょう。しかし、本当にそうなのでしょうか?

 男性の平均余命は80.21歳なので(平成25年の厚生労働省の簡易生命表)現在、78歳の勇さんにはあと2年しか残されていないとも考えられます。妻からの離婚に応じても、2年間で得られるのは、わずか36万円(月3万円×24ヵ月)に過ぎませんが、そんな微々たるお金に目が眩んで、50年も連れ添った妻と離婚するなんて、全く釣り合いが取れないように思えます。しかし、妻の美智子さんにも同じことが言える(50年も連れ添った夫と離婚するのに、微々たる年金しか請求しない)ので、やはり夫婦のことは夫婦しか分からないのでしょう。

 このように「離婚しない場合の支払>離婚する場合の支払」だからこそ、最終的には勇さんから離婚の同意を取り付けることができましたが、もし逆なら、同じ結果を得られたでしょうか?

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

露木幸彦[露木行政書士事務所代表]

つゆき・ゆきひこ/行政書士、フィナンシャルプランナー。1980年生まれ。国学院大学卒。男性の離婚相談に特化した行政書士事務所を開業し、開業から6年間で有料相談件数7000件、法律文書作成900件を達成。公式サイトは1日訪問者3300人、会員数は1万3000人と、業界では最大規模にまで成長させる。2008年よりドコモ、au、ソフトバンクの公式サイトで法律監修を担当。四半期に一度、大相談会を開催している。主な著書に『結婚貧乏~結婚してはいけない人を避ける方法』(中央公論新社)、『離婚のことばハンドブック~今すぐ解決したい人のキーワード152』(小学館)、『男のための最強離婚術』『男の離婚 賢く有利に別れるための6つの成功法則』(共にメタモル出版)などがある


実例で知る! 他人事ではない「男の離婚」 露木幸彦

昨今の離婚事情は複雑化している。夫が借金、浮気、暴力を繰り返して妻に愛想を尽かされるという「昭和型離婚」ばかりでなく、足もとでは「草食系離婚」も急増している。妻が多重債務、不倫、ヒステリーなどを繰り返し、真面目で優しい夫がそれに絶えられなくなって離婚を決意するというパターンだ。そうしたなか、離婚トラブルで悩み悶える男性が増えている。一度離婚トラブルに発展すると、男性は多くの精神的・物理的な負担を強いられる。到底納得できない理不尽な離婚トラブルに意図せず巻き込まれた場合に備えて、普段から対処法を考えておくことは必要だ。「男性の離婚相談」に特化し、数多くの相談実績を誇る行政書士の露木幸彦氏が、毎回実例を挙げながら、男性が陥り易い離婚トラブルへの対処法を指南する。読まずに泣くか、読んで笑うか――。現在離婚トラブルで悩んでいる人もそうでない人も、「他人事ではない男の離婚」について考えるための参考にしてほしい。

「実例で知る! 他人事ではない「男の離婚」 露木幸彦」

⇒バックナンバー一覧