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佐高 信の「一人一話」

江戸の死生観がその生涯に重なる 杉浦日向子の復活

佐高 信 [評論家]
【第25回】 2015年7月21日
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 没後10年、NHKの「お江戸でござる」が評判だった杉浦日向子の人気が再燃している。たとえば、ちくま文庫は「現代に生きた、粋で格好いい江戸の女」だった杉浦のフェアをやっている。

 亡くなって4年後の2009年に私は田中優子と『杉浦日向子と笑いの様式』(七つ森書館)という本を出したが、そこにおさめた私との対談で杉浦は、笑いについてこう言っている。

 「現代に笑いが少ないのは、失敗してはいけないんだということを子どもの時から教えられていることが原因なんじゃないでしょうか。失敗して当たり前なんだというふうに育っていかないと笑えないですよ」

 粋な杉浦は野暮が嫌いだったと思うが、野暮も社会で必要だという。少しくシニカルな杉浦の野暮論を聞こう。

 「どこの分野にいなくてはいけないかというと、経済界は野暮でないと務まらない。
 野暮というのは価値観を数値に変換できる人なんですよ。花を見てきれいだねと言う前に、3,000円ぐらいかな、5,000円ぐらいかなと言える人が野暮なんです。つまり、大店のダンナ衆は粋でも、金庫番の番頭さんは野暮でないと店がつぶれてしまう。
 ですからいまの企業でも番頭さんがしっかりしていて、粋な大ダンナがいると、とても潤いのある企業になるんですが、番頭さんクラスが社長になっている会社は全然おもしろくないんですね」

少女の頃からの放浪癖 「フンドシが好き」な異能異才の人

 2005年夏に杉浦は46歳で亡くなった。新聞等には「急死」とあったが、数年前から、血液のガンにおかされていることを知っていたので、私はこの日の来るのを恐れていた。

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佐高 信 [評論家]

さたか・まこと 1945年山形県酒田市生まれ。評論家、『週刊金曜日』編集委員。高校教師、経済雑誌の編集者を経て評論家に。「社畜」という言葉で日本の企業社会の病理を露わにし、会社・経営者批評で一つの分野を築く。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本のについて辛口の評論活動を続ける。著書に『保守の知恵』(岸井成格さんとの共著、毎日新聞社)、『飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快』(金曜日)など。


佐高 信の「一人一話」

歴史は人によってつくられる。ときに説明しがたい人間模様、ふとした人の心の機微が歴史を変える。経済、政治、法律、教育、文化と幅広い分野にわたって、評論活動を続けてきた佐高 信氏が、その交遊録から、歴史を彩った人々の知られざる一面に光をあてる。

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