ストーリーとマインドマップを活用する

――この本の構成には、ジョセフ・キャンベルによる「神話の構造」が採用されていますね。イノベーションのステップを「出発」「テスト」「帰還」というストーリー構成にしたのはどうしてでしょうか?

保守的な大企業でイノベーションを起こすには?ハイス・ファン・ウルフェン(Gijs Van Wulfen) イノベーションコンサルティング、スタートアップのスペシャリスト。オランダの大手食品メーカー、コンサルティング会社を経て独立。世界中の様々な製造・サービス企業、NPO組織でイノベーションを成功に導いている。その経験のなかから考案した独自のイノベーションメソッド「FORTH」は、デザイン思考や最新マーケティング手法が組みこまれ、クリエイティブなビジネス思考のベストプラクティスになっている。

例えば午後の遅い時間、私が講義をするだけなら、聞いている人は眠ってしまうでしょう。でも、ストーリーにすると興味を持って聞いてもらえます。

テレビもラジオもない時代、人はストーリーで色々なことを学んでいました。日本でも、おばあさんやおじいさんからストーリー(昔話)を聞くことで文化が伝承されてきました。ストーリーを語ることは、人々に影響を与える非常に強力な方法だと思います。記憶にも残りやすいのです。

――マインドマップはどのように活用していますか?

マインドマップを特によく使うのはブレインストーミングのときです。発散から収束に向かおうとする段階で、アイデアのマインドマップを作ります。マインドマップは一般に発想を広げることに役立つと思われていますが、私は収束に最適なツールだと思います。ワークショップなどでも収束が必要な段階ごとによく使います。

マインドマップはシンプルで、一目でアイデアどうしのつながりがわかり、誰にでも使える優れたツールです。私がFORTHの第2段階でワークショップを行ったある企業では、4時間で922もの新製品のアイデアが生まれ、それをマインドマップで収束させました。これは、その前の第1段階で5週間かけて準備したからこその成果でもあるのですが……。