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小川たまかのダイバーシティ・ホンネとタテマエ

「○○ハラスメント」を主張して「弱者ぶる人」との向き合い方

小川たまか [編集・ライター/プレスラボ取締役]
【第6回】 2015年7月29日
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「○○ハラスメント」という言葉ができる理由

「ハラスメント」という言葉によって隠れていた問題が顕在化するが…

 セクハラ、マタハラ、モラハラ、パワハラ、アルハラ、ドクハラ、アカハラ、オワハラ……。○○ハラスメントと名付けられた言葉はとても多い。ニュースで新しい「○○ハラ」が流れるたびに、ネット上では「また○○ハラかよ」といったつぶやきが見られる。「若者の~~嫌い」と同様に、次から次へと造語と現象を作りだす“マスコミ”に腹が立つのだろう。

 安易に新語を仕立て上げることに腹が立つ気持ちはわかる。ただ一方では、その「○○ハラ」という言葉に助けられている人もいる、とも思う。「セクハラ(セクシャルハラスメント)」が新語・流行語大賞の新語部門で金賞を受賞したのは1989年だそうだが、それまでの世の中で「OLのお尻をぺろっと触る“ぐらい”、いいじゃない。冗談じゃない」で済まされてきたことが、これ以降、「あってはならない行為」として一定の認知を得たことは大きいだろう。

 「マタハラ(マタニティハラスメント)」という言葉が話題になったのはつい最近だ。この言葉が取り上げられたことによって、「女性が輝く社会に」などと言われているさなかにも、妊娠中の女性に対して企業からのプレッシャーがあることが広く知られることとなった。

 言葉は、現象をシンプルに伝えるという力がある。

 「仕事中に上司や取引先から、仕事上で上下関係があることを利用して性的な嫌がらせを受けることがあって、それってすごく嫌なことなんです」

 「妊娠・出産は本来喜ぶべきことであるはずなのに、職場にいる女性が妊娠すると『みんなに迷惑がかかる』『どうするつもりなの?』と叱責されることすらあります。これでは子どもを産む気になんて到底なれない」

 その訴えを「セクハラ」「マタハラ」と一言で言い換えることは、その現象が起こっていること、それが問題であることを知らない人に、何が起こっているかを知ってもらいやすいというメリットがある。流行語になれば問題の認知度を一気に上げる。議論の円滑化につながることもある。

 しかし言葉が現象をシンプルに伝えることは、言葉が独り歩きするという危険性も孕む。「セクハラ」という言葉を一般化することで、「女性がセクハラと訴えればなんでもセクハラになる」と言う人もいるし、今や「セクハラ」には当初の深刻な響きは消え、どこか「性被害の中でも軽いもの」「茶化していいもの」というようなイメージすらつきつつある。

 本来、「セクハラ」や「マタハラ」など全ての「○○ハラ」という言葉ができた背景には「その言葉が表す現象を撲滅したい」という意志があったからだ。その問題をなくすためには、その問題があることをまず社会的に認知しなければならなかった。しかし、いったんその言葉が知られると、社会的認知が広がる一方で問題が解決しないまま面白半分でその言葉が使われ続けるということもある。

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小川たまか [編集・ライター/プレスラボ取締役]

1980年・東京品川区生まれ。フリーランスとして活動後、2008年から下北沢の編集プロダクション・プレスラボ取締役。働き方、教育、ジェンダー、性犯罪などを取材。ツイッターアカウントは@ogawatam


小川たまかのダイバーシティ・ホンネとタテマエ

今、注目度が高まっている「ダイバーシティ」という概念。多様化・多様性に対して、賛同する意見が多い一方で、否定的な見方があるのも事実。特に日本企業内で取り入れられる場合に、「女性の働き方」の代名詞でも使われることが多くなっている。何か問題が起こったとき、男性を始め、当事者以外の人は実はどう感じているのか?そこから見える日本社会の姿とは?
「ダイバーシティ」をタテマエだけでなく、多彩な角度・観点から本音で論じる。

「小川たまかのダイバーシティ・ホンネとタテマエ」

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