確かに金額は高いが
日経のFT買収は妥当
日本経済新聞社は、英国の名門経済紙ファイナンシャル・タイムズを発行するフィナンシャル・タイムズ・グループ(以下「FT」)を1600億円で買収することで、FTの親会社であるピアソン社と合意した。
7月24日の『日本経済新聞』朝刊は、一面トップでこのニュースを大々的に報じた。記事では、「紙媒体を持つ世界のビジネスメディアは『日経・FT』とWSJ(※ウォール・ストリート・ジャーナル)を傘下に持つダウジョーンズ(DJ)の2強体制に集約される。通信社では米ブルームバーグの存在も大きく、3つの勢力がグローバル市場でせめぎ合う構図になる」と世界のビジネスメディアを要約し、末尾は「我々は報道の使命、価値観を共有しており、世界経済の発展に貢献したい」という喜多恒雄・日経会長の言葉で締めくくっている。
自らを対象とするニュースとしては、何とも派手で勇ましい書きぶりだが、日経社内の上司・同僚こそが最も熱心な読者となるこの記事にあって、サラリーマン・ジャーナリストである書き手は、自身の最高の文才を発揮したに違いない。
このニュースで最も話題になっているのは、FTの年間営業利益の35倍とされる1600億円という金額の妥当性だ。
FT買収に複数の企業が手を挙げた中で、最終的に日経が提示した価格の中に、いわゆる「勝者の呪い」の成分が含まれるのはやむを得ない。単にFTのオーナーとなるだけにとどまるなら、日経は割高な株価での巨額の株式投資を行っただけに終わってしまう。日経がFTをどれだけ有効に活用できるかが勝負だ。