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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

TPPは日本に無益、中国経済圏拡大への対処こそ重要だ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第24回】 2015年8月6日
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 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉が7月31日、大筋合意に至らないまま閉幕した。これに関して、つぎの2点を指摘したい。

(1)TPPに経済的な効果はほとんどない。したがって、これが妥結しなかったからといって、日本経済に大きな影響があるわけではない。

(2)TPPとは、アジア太平洋地域における中国の影響力拡大をけん制しようとするアメリカの戦略である。したがって、中国のリアクションが重要だ。とりわけ、AIIBのような動きは軽視すべきでない。

妥結でも合意不成立でも
日本への経済的影響は限定的

 今回のTPP交渉で最後に問題となったのは、乳製品や新薬開発データの保護期間だったが、日米間の実質的な問題は、コメと自動車だった。ただし、これらも経済的に見ると、その影響はプラスにもマイナスにも限定的だ。

 TPPに関しては、「最大の成長戦略である」とか「デフレからの完全脱却を目指す日本にとって欠かせない課題」などという意見が見られる。しかし、仮に参加国間の合意が得られたとしても、経済に大きな影響を与えるような効果は持ちえないのである。

 コメについては、日本は1キロ341円というきわめて高率の関税を課している。これを撤廃または削減するなら、日本の消費者にとっては大きな福音だろう。しかし、これを維持することは最初から決まっている。

 日本はこれまで、無税で年77万トンのコメを「ミニマムアクセス」として輸入している。うちアメリカ産は2013年度で36万トンだ。今回のTPP交渉で、この枠とは別に、アメリカ専用の無関税特別輸入枠を作ることとなっていた。報道では、これが、年7万トン程度で決着するだろうとされていた。

 しかし、これは、コメの年間生産量840万トンと比べると1%に満たない(図表1参照)。したがって、影響はほとんど無視しうると言えるだろう。

 
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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